神河現代 - 《二天一流、一心》プレビュー
神河現代 - 《二天一流、一心》プレビュー
新カード《二天一流、一心/Isshin, Two Heavens as One》の情報が出てきました。
日本語訳の記事は出ていないようですが、日本語名はわかっているので併記します。

ISSHIN INSPIRATION
So, what’s the deal with this guy? Well, while on the Vision Design team for Kamigawa: Neon Dynasty, we worked in tandem with the Creative team, and they created sweet characters poignant for story purposes that we would get to design something around. At the time, there was a central leader to the Asari Uprising we wanted to feature. And this card had a name, but no rules text. My main role on the Vision Design team was to be a firehose of top-down designs for the set. But for this card, I only submitted one design, and it survived all the way to paper, a rare treat!

Every card has an audience it’s created for. In the past usually we focused mainly on Limited and Standard. But Magic is a lot of different things to a lot of different people now, so we have more target audiences to consider when making cards. The lens I normally design cards through is Commander first, and in that format, I really like doubling things. Adam Prosak even let me put the word "triple" on a card in one of my personal favorite designs: Fiery Emancipation. And Panharmonicon already had flicker strategies cornered in Commander. So, what’s something else we can double?

引用元
ISSHIN, TWO HEAVENS AS ONE Posted in Card Preview on February 2, 2022
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/card-preview/isshin-two-heavens-one-2022-02-02


今回の侍のメカニズムである「(侍か戦士が)単独で攻撃するたび〜」のような攻撃による誘発能力をさらにもう1回誘発させる能力持ちです。
《アイスウィンド・デイルのウルフガル/Wulfgar of Icewind Dale》と違い、対戦相手の攻撃でも誘発するので、コンボやシナジーの幅はさらに広がります。
侍がいる赤白黒の色を持つので、侍デッキの統率者として、活躍できるでしょう。

その他、新しい情報です。

《カエル乗り、達成》の壁紙が公開
https://magic.wizards.com/en/articles/media/wallpapers

アリーナの情報、『神河:輝ける世界』のイベントなど
https://mtg-jp.com/reading/publicity/0035770/

『神河:輝ける世界』における「ザ・リスト」の更新 | マジック:ザ・ギャザリング
https://magic.wizards.com/ja/articles/archive/feature/shen-he-hui-kerushi-jie-niokeruzarisuto-nogeng-xin-2022-02-07

『神河:輝ける世界』の発売を記念して製作された、初音ミクの曲「Connected」
https://www.youtube.com/watch?v=t6wmQy-5EAM

神河現代 - 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》プレビュー
神河現代 - 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》プレビュー
神河現代 - 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》プレビュー
新カードの情報が出てきました。

 過去が未来を呼び起こすことがある。これは『神河:輝ける世界』では間違いなく真実だ。

 前回、2004年に訪れた後、我々はその次元の過去に基づいて作り上げた輝ける新しい美学とともに神河へと戻ってきた。私は『神河救済』で初めてドラフトを経験したので、神河は私のマジックの故郷だ。そのときのドラフトでは《血塗られた悪姥》が3枚入った超アグレッシブなデッキで2-1して、決勝でダブル《地揺すり》デッキに負けただけだった。

(もし約20年前のドラフトに興味がなくても心配はいらない、プレビュー・カードは次に出てくる)

 アグレッシブなデッキを早く(そして頻繁に)うまくやることが、私が今でもドラフトするときはいつでも2マナ域と序盤の攻撃を好む理由なのだろう。過去から知っていることを引き出し、未来の新しい状況に挑むことはこの世界の変化を理解する助けになる。

 またこれは新しいマジックのカードがどうしてそのようになったかという理由であることもある。神河へ初めて訪問したときのことに詳しい人は皆、新しい伝説の土地のサイクルがどこから来たのか分かるだろう。これが《見捨てられたぬかるみ、竹沼》だ。

引用元
翻訳記事その他 2022.2.2 見捨てられたぬかるみ、竹沼
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035764/


《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を含んだ、魂力もちの伝説の土地サイクルは、『神河物語』の伝説の土地サイクル(《永岩城》など)のオマージュです。
統率者戦では、シングルトンゆえに伝説のデメリットを無視でき、統率者をはじめとした伝説のクリーチャーがよく出るのでシナジーを形成しやすくなります。

新しい伝説の土地サイクルもまた、伝説のクリーチャーとコスト軽減というシナジーを形成します。
旧サイクルが、能力とクリーチャーとが噛み合う必要があったのに対して、新サイクルではクリーチャーをコントロールさえしていれば恩恵があるので、より自由度が高いです。
また、仮にクリーチャーをコントロールしていなくても、魂力を使うことは可能であり、この点も活用がしやすくなっています。

性能以外でも、『神河物語』のサイクルに、『神河救済』のメカニズムが搭載されてリメイク、という点が美しいです。
神河現代 - 新旧メカニズム
神河現代 - 新旧メカニズム
神河現代 - 新旧メカニズム
マローの開発秘話コラムが更新されました。
神河を再訪するにあたり、旧メカニズムのどれを再録し、新メカニズムをどのようにして作ったのか、という話です。

両面をプレイする
 先週、現代性と伝統性の対立をデザインの基にしたと説明した。そして、その現代性の側はアーティファクトに、伝統性の側はエンチャントに焦点を当てていると。つまり、それぞれの面にアーティファクト・クリーチャーとクリーチャー・エンチャントがいて、そのカード・タイプの大量のカードを使い、そのカード・タイプをメカニズム的に参照するカードもあるだろうということである。この2つの面に焦点を当てるため、私はそれぞれに固有のメカニズムを持たせようと考えた。現代性の側はアーティファクトが、伝統性の側はエンチャントが持つのだ。

 しかし、興味深いことに、現代性のメカニズムは、我々がある異なる問題を解決すべく取り組んでいたことから生まれた。この世界にはどうしても大量の機体や装備品が必要だが、そのための枠が足りなくなったのだ。装備品をクリーチャーの枠に入れる方法はないだろうか。そうだ、クリーチャーでもあるとしたらどうだろうか。

引用元
Making Magic -マジック開発秘話- 2022.2.1 『世界』の創造 その2
https://mtg-jp.com/reading/mm/0035762/


旧メカニズム再録の是非を端的にまとめるなら、以下の通りです。

武士道:大量には使わないのでNG
反転:変身する両面カードで事足りるのでNG
転生:スピリット部族のメカニズムは不要なのでNG
精霊術:秘儀を使わないのでNG
連繋:スペルに拡張してテストしてもダメだったのでNG
秘儀:メカニズム的に使わないならサブタイプはつけないのでNG
忍術:人気があり再録実績もあるのでOK
献身:部族限定かつデザインが難しいのでNG
魂力:問題ないのでOK
歴伝:デメリットが不評なのでNG
掃引:最悪のメカニズム10なのでNG
知識:フレイバーもメカニズムも神河に相応しくないのでNG

失敗セットと言われるだけあって、メカニズムの評価もなかなかに厳しいものです。

興味深いのは魂力への評価で、「キッカーと同じで広すぎる」のが問題視されています。
実際、手札で捨てて起動する能力は全て魂力に置き換えることができるので、サイクリングや湧血などは魂力と同等と言えるでしょう。
湧血はともかく、サイクリングはキーワード能力なので、他のカードで参照できる点が違いです。
また、魂力もモード付き両面カードでまとめられるのではないか、という考え方もあります。
つまりは1枚で2通りの使い方ができるカード、ということです。
呪文と起動型能力で打ち消し耐性が違うなどの実用性以外だと、魂力では複数の効果を持たせることができるデザイン性が異なるでしょうか。
今のところ、そういったカードは公式には無いようですが、オリジナルカードで作ってみても面白そうだと思いました(※1)。

また、魂力の利点として、カードタイプを選ばないというものがあります。
特に、忍術はクリーチャーが持つものですから、他になるべく幅広いカードタイプで持てるメカニズムが欲しかったことでしょう。

一方で、新メカニズムの開発経緯です。
ここでも、カードタイプの比率が問題になりました。
現代性のアーティファクトテーマとして装備品を大量に入れるには枠が足りなくなるので、クリーチャーと兼用できないか?という発想から、換装が生まれました。
また、伝統性のエンチャントテーマで英雄譚を入れる際にも同様の問題が起き、クリーチャーとの兼用が考えられました。
最初は英雄譚自身がクリーチャー化、次にクリーチャートークンと変化し、最終的にクリーチャーに変身する形に落ち着いたそうです。
どのカードタイプでも持たせられる魂力とは対照的に、カードタイプのバランス調整のために生まれたメカニズムというのが面白いでしょう。
しかし、機械と生命を融合する未来派技術の換装、歴史を重んじる伝統派の両面英雄譚、というのは、フレイバー的にも違和感がありません。
単なる調整というだけで収まらなかったのは実に見事です。

そして、2つのテーマと中心メカニズムができたところで、その両方に関わるメカニズムとして改善と、調和(両方をコントロールすると恩恵がある名前なしメカニズム)が作られました。
この手の対立する陣営にメカニズムを与えるのはよくあることですが、その両方を繋げるメカニズムというのは希少なので、興味深い例です。
『ゼンディカーの夜明け』におけるパーティーメカニズムも、その一例と言えるでしょう。

最後に、他のセットとのシナジーを考えて、部族カードは神河固有のものと、一般的なものとをまとめて扱うようにデザインされました。
これも、旧神河が孤立的過ぎたことを踏まえてのことでしょう。
一方で、スピリットは特にそういった工夫がありません。
そもそも必要ないでしょう。
旧神河の頃ではスピリット部族はマイナーでしたが、今では大分メジャーになりました。
イニストラードでは主要部族ですし、死者の魂という明快なフレイバーから、他の次元でもカードやトークンとして何度も登場しています。
こうした変化もまた面白いところです。

※1
後に、公式のカードとして魂力を2つ持つ《巨大な空亀》が公開されました。
神河現代 - セットデザイン・リード
神河現代 - セットデザイン・リード
神河現代 - セットデザイン・リード
ネオ神河の開発コラムが更新されました。
執筆者はセットデザイン・リードのデイブ・ハンフリー/Dave Humpherysです。

 私は良い挑戦を好みます。より挑戦的なデザインのセットをリードしたいのです。セットを制作する難易度を上げている犯人が私だというのはよくあることです。神河に再訪することが決まると、私はそれを正しくやり遂げるのは大変だと思いました。
(中略)

 私がこのセットデザインをリードすることが判明すると、すぐに私は「デュエル・マスターズ」のチームと連絡を取りました。私は東京オフィスに手伝ってくれる人は誰かいないかと訪ねました。ほどなく、真木孝一郎が彼の他の仕事の合間に手伝うことができると判明しました。藤井由紀は真木とのデザイン・チームの会議や他の細かい会議での通訳を快く引き受けてくれました。

 彼らはそれぞれ、日本のプレイヤーがこのセットに望んでいるもの、そして前回神河に訪れたときに最も魅力的なものと最も魅力的でなかったものについての素晴らしい視点を持っていました。また彼ら東京オフィスの他の人たちから得たカードのデザインや意見の取りまとめにも貢献してくれました。真木は彼が見たい画像や作ってほしいキャラクターや物の元ネタや種類が書かれた文書をたくさん作成しました。これらの文書により我々はこのセットで間違ったことをしていないという強い確信が得られました。彼らはセットデザインでのメカニズムの採用に関して大きな影響を持っていました。

 このサポートすべてを受け、そして素晴らしい見た目のコンセプト・アートが届き始め、私はなにか特別なものがここにあると確信し始めました。それではそのメカニズムを見ていきましょう。マーク・ローズウォーターは他の過去のメカニズムを使わなかった理由について深く掘り下げてくれるでしょう。

引用元
翻訳記事その他 2022.1.29 『神河:輝ける世界』デザインに生命をもたらす
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035760/


アーティファクトとエンチャント
今まで、どちらかのカードタイプをテーマとした次元はありましたが、両方ともテーマにしたことはなかったので、こうして両方をテーマに組み込める、現代vs伝統というアイデアは気に入っている、とのことです。
言われてみれば、なるほどと納得します。
アーティファクトもエンチャントも、クリーチャーと兼任できるので、結果的に幅広いカードにシナジーを持たせることができるのも利点と言えるでしょう。
改善が、アーティファクトともエンチャントともシナジーを持てるように、単純に二律背反というわけではないのも面白いところです。

改善
改善はほぼ当初から変更なしで完成したメカニズムで、変更されたのは改善されたクリーチャーを並べるようなデザインも作り始めたこと、とのことです。
何かメカニズムを考えたら、それを軸にしたデッキが作れるか、作れるとしたらどんなデッキにしたいか、という視点まである方がいい、と言えるでしょう。
もちろん、リミテッドやカードパワーの点から、その有無だけを参照したり、自己完結したり、というカードも必要でしょうが、それ以外もデザインできるに越したことはありません。
余談ですが、当初は「強化/enhanced」というネーミングだったそうです。
まさに自分が過去に作ったオリカと同じだったので驚いています。
http://forum.astral-guild.net/board/21/1622/83

忍術
一方、改善と相性が悪いのが忍術で、調整版が検討されたそうです。
しかし、忍者は強化することよりも、攻撃を通すことがテーマなので、最終的には忍術は変更なしの再録となりました。
これは中々悩ましい&興味深い話だと思います。
陣営のテーマやメカニズムごとのシナジーは、できるならあった方が面白いのは確かです。
特に、リミテッドにおいて楽しい選択肢を増やすことができるでしょう。
しかし、現実的には、全てにシナジーを作ることはかなり難しい話です。
これだけなら単に妥協にも見えますが、そうではないとも考えられます。
というのも、「強化する改善」「攻撃を通す忍術」と、別軸の戦略があることもまた重要だからです。
シナジーがありすぎると、どのデッキでも強化して殴る、というワンパターンになりかねません。
そう考えると、メカニズム間のシナジーに拘りすぎないことも必要かと思います。

魂力
魂力の利点は、デザインの汎用性の高さ、マナフラッド・マナスクリュー受けのどちらにも使えることである、とのことです。
また、エンチャント、アーティファクト、土地にだけつけるという制限を設けたそうです。
旧神河ではスピリット・クリーチャーに限定し、能力もクリーチャーの常在型・起動型能力と関連付けたものでした。
これをそのままにすると、デザインが窮屈になるので、変更しやすい能力語であったことは幸いでしょう。
カードタイプ制限の理由は定かではありませんが、クリーチャー用のメカニズムはすでに多くあるためではないかと推測します。

伝説
伝説と言えば神河だったのが、今ではドミナリアのテーマというイメージがあるそうで、伝説の扱いを少し変える意図があったそうで、その1つが伝説土地+魂力、とのことです。
統率者戦に使える多色の伝説クリーチャーが旧神河には1枚しかなかったので意図的にそれらを供給した、というのは、まさに今のMTGらしいと言えます。
昔よりも多色カードが気軽に作られるようになった、という点においても、です。

サイクル
神河で人気のあった、ドラゴン、祭殿、群れをそれぞれ新しくカードにした、とのことです。
リメイクの仕方もそれぞれに異なっているのも特徴でしょうか。
新しく登場する招来サイクルは「単色での根本原理」を目指したものだそうです。
根本原理に倣うなら単色マナ7つというコストになるハズですが、《絶望招来》はそうなっていません。
その色らしさを追求した派手な効果の呪文というコンセプトでしょうか。
個人的に気になったのは、ここで明神が出てこないことです。
プレビューでも、でない非公式リークでも、公式ストーリーでも全くないので、人気がないから不登場、ということなのでしょうか。
《絶望招来》のFTをみるに、存在はしているようですが。

英雄譚
クリーチャーに変身するアイデアは好評だが、すぐに攻撃できるのは問題ということで、追放して変身するのが基本(一部は速攻もち)にしたそうです。
また、変身した後のカードには伝説をつけない決定をしたとあるのですが、ここでは理由が明記されていません。
コモンでも英雄譚を登場させたので同名が並びやすくなったから、クリーチャーはあくまで実体のないイメージ(故にエンチャント)だから、ということでしょうか。

換装
装備して攻撃した後、クリーチャーに戻すことが出来る点は、問題なしと判断され、意図的に残されたようです。
仮に防ぐようなテキストを書くとなると不自然ですし、それが強すぎるようなら、スタッツで調整すればいいだけ、ということでしょうか。

侍(と戦士)
忍術が再録された一方で、武士道は再録されませんでした。
シンプルで良いメカニズムではあるものの、相手の出方次第で役に立たなくなるのが問題視されました。
そこで、賛美の亜種である「1体で攻撃するたび〜」というテーマになったそうです。
侍は集団戦よりも一対一の決闘のイメージの方が合うので名案と言えます。
侍と戦士をまとめたのは、孤立的なメカニズムにしないためでしょう。
忍者とならず者も同様かと思います。

ファイレクシアを少々
これまでの神河テーマの中に、ストーリー上の必要性からファイレクシア要素を入れることになるわけですが、それはむしろ楽しい課題だったようです。
それにしても、タミヨウはイニストラードやラヴニカや新ファイレクシアと、他次元でばかりカード化されて、神河らしさが反映されないのが残念です。
いつか元の姿に戻って、「神河でのタミヨウ」がカード化されることを願います。

《カエル乗り、達成》
架空の忍者、自来也がモデルとのことです。
古い民話のキャラクターがモチーフなので、伝統性のエンチャントシナジーがあるのでしょう。
「一緒に飛び跳ねる能力」というのは、カエルらしさ&騎乗する様を表現すると同時に、忍者の「攻撃を通す戦略」にも合致するのが素晴らしいところです。


その他、新しい情報です。

《平地》浮世絵アート版の壁紙が公開
https://magic.wizards.com/en/articles/media/wallpapers

日本語セットブースターの発売遅れ
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/news/kamigawa-neon-dynasty-product-delay-2022-01-28
神河現代 - 再訪に至る道のり
神河現代 - 再訪に至る道のり
神河現代 - 再訪に至る道のり
マローの開発秘話コラムが更新されました。
なぜ神河を再訪することになったのか、どうやって再訪するのか、という話です。

帰還限界点
 新しい世界に基づくトップダウン・デザインをしたのは初めてだったので、我々は多くの失敗をした。我々はメカニズムの前にクリエイティブを確定させたが、それによって多くのぎこちないデザインや孤立的メカニズム(同セット内の他のカードと組み合わせてしか働かないもの)を生むことになった。我々は大テーマとして伝説関連を選んだが、これはセットにうまく編み込まれておらず、大量のブースターを開封しても気づかないことがあり得た。クリエイティブそのものは、ユーザーの多くに馴染みがない日本神話の一面に忠実すぎた結果、セットの大部分が多くのユーザーにとって日本よりも奇妙に感じられるものになっていた。全体として、神河はクールな次元だったが、その実装は可能な限り良いものにできていたとは言えなかった。(再び強調しておきたいのは、我々がこの種のトップダウンのブロックをデザインしたのはこれが初めてだったということである。)

 結果として、このセットはうまくは行かなかった。売上は落ちた。プレイ数は減った。メカニズム的にもフレイバー的にも、市場調査の結果はセットへの市場調査を始めて以来最低だった。社内で、これは大失敗だと判断された。そしてこれで話はおしまい、だったが、ここで統率者戦が勃興した。このフォーマットは伝説のクリーチャーにスポットを当て、突然、『神河物語』ブロックの伝説のクリーチャーが注目を集めることになったのだ。当時、セットごとの伝説のクリーチャーの枚数はずっと少なかったことを思い出してもらいたい。また、神河には、時を経てついにそのユーザーを見つけた愛すべき要素があった。

 読んだことのない諸君のために説明しておくと、私のブログはTumblrでやっていて、Blogatogという。毎日、私はマジックのプレイヤーからの質問に答えているが、その日の話題によって盛り上がったり盛り上がらなかったりしている。何度も何度も取り上げているテーマは、このブログのレギュラーという内向けジョークとも言えるほどになっている。一番繰り返しているテーマが、神河への再訪だった。初代『神河物語』がほぼあらゆる面で失敗していたので上司への売り込みは難しいと説明していたが、からくりがそうだったように、私が無理だといえば言うほどユーザーは求めるものなのだ。多くのプレイヤーに何年もこの話をしていて、私も内心ではこれはしなければならないものなのだということがわかっていた。しかし、そのための方法は見えなかった。今日の話は、「絶対にありえない」から「やろう」に到った経緯についてのものである。

引用元
Making Magic -マジック開発秘話- 2022.1.28 『世界』の創造 その1
https://mtg-jp.com/reading/mm/0035751/


旧神河の失敗要素は、当ブログでは再三書いてきましたし、このコラムでもおさらいが書いてありますので、それ以上のことは触れません。
にも関わらず再訪することになった理由は何なのでしょうか。

統率者戦の人気拡大による伝説クリーチャーへ注目が集まったこと、ブログで「再訪はあり得ない」と何度も話題にしたために逆に再訪してほしいという熱が高まったことがまず下地としてありました。
さらに、開発部にも、ポップカルチャー日本風の次元を作りたい、というモチベーションがあったようです。
とはいえ、これだけなら新しい次元で事足りますし、実際に神河を意識せずに次元を作ったところ、明らかな別物になりました。
神河特有の種族を入れることはできますが、それでも神河らしさは十分ではありません。

最後の一押しとなったのが「対立構造」でした。
ギルド・断片・氏族のような組織・陣営の対立を、現代性と伝統性との2つに割り当てるということです。
伝統陣営を作るのであれば、昔訪れたことのある次元のほうが、より芳醇なものに仕上がります。
新しい次元を作るのではなく、神河を再訪する意義がここにあると言えるでしょう。

後は、現代と伝統の対立構造を、メカニズム的にどう落とし込むかです。
現代的面をアーティファクトで、伝統的面をエンチャントで、表現することに決まりました。
前者はよくある手法ですが、後者は祭殿などの人気エンチャントがあった神河ならではと言えます。
コラムでは触れていませんが、アーティファクトと英雄譚というエンチャントの両方を、「歴史的」という過去を表現するメカニズムとして扱った『ドミナリア』とは対照的なのが面白いところです。
この対立は、アーティファクト・未来志向のNo.1,2である青と赤、エンチャント・伝統志向のNo.1,2である緑と白とでキレイに分けることができるのも利点です。

なぜ不人気で有名な神河に再訪したのか、発表当時から気になっていました。
こうして経緯を見てみると、ただ失敗が悔しいからリベンジしたい、というだけではなかった、と分かります。
特に、フレイバー的にもメカニズム的にも「神河だからこそ」という意義があるのは嬉しい限りです。
神河現代 - メカニズム
神河現代 - メカニズム
神河現代 - メカニズム
ネオ神河のメカニズムが発表されました。
それぞれについて、思うところを書きます。

翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』のメカニズム
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035754/

換装
普段はクリーチャーですが、換装コストを支払うことで装備品のように装備できる能力です。
アーティファクトが持つ能力なので、現代側のメカニズムでしょう。
MTGで言えばリシドを思い出す能力でしょうか。
オーラになる能力で、能動的にクリーチャーに戻せるという点も共通しています。
MTG以外では、デュエル・マスターズのクロスギアを連想させます。
クロスギアは、召喚も起動も同じコストなのが相違点です。
そして、デュエル・マスターズでのクロスギアはサムライとのシナジーがあったというのが、神河との奇妙な縁と言えるでしょう。

改善されている
装備品、自分のオーラ、カウンターがついてる(乗ってる)かを参照する用語です。
過去にオリカスレで、似たような用語を考えたことがあるので、少し嬉しくなりました。
http://forum.astral-guild.net/board/21/1622/83
現代側のアーティファクトテーマとも、伝統側のエンチャントテーマともシナジーできるので両方の陣営にあるでしょう。
気になるのは、相手の弱体化オーラでは「改善されている」に該当しないという自然な解釈である一方、-1/-1カウンターは該当する、という点です。
普通に考えれば改善とは言い難いのですが、ファイレクシアンにはむしろ「完成に近づいた」という解釈ができるためでしょうか。

英雄譚
既出メカニズムの再利用です。
エンチャントのサブタイプなので、伝統側のメカニズムでしょう。
これまでの神河の歴史を表現している点も、伝統側にふさわしいと言えます。
現代側が新登場メカニズム、伝統側が再利用メカニズムとなったのが面白いところです。
個別のカードは同日公開の別記事(※1)にて多数紹介されています。
また、旧神河から千年以上も経過しているので、再登場が難しいと思われていたキャラクターを、肖像という形で英雄譚の裏側にて登場させたのは予想外でした。
エンチャント・クリーチャーなので、フレイバー的には実体ではなくイメージや記憶という表現になる一方、メカニズム的にはエンチャントシナジーを継続できる、名案だと思います。

忍術
旧神河で登場し、その後も特殊セットにて何度も登場したメカニズムが、再訪にあたって再録されました。
主人公が忍者PWであり、人気の高いメカニズムなので、再登場は当然でしょう。
ただ再登場させただけではなく、忍術で出すことによって追加効果を得られるカードも登場するようです。

魂力
これも旧神河でのメカニズムを再録したものです。
忍術に比べると影が薄いのですが、シンプルなメカニズムであり、最近でも『モダンホライゾン2』にて新カード《霊光の流れ者/Ghost-Lit Drifter》が登場したので、考えてみると可能性は高い方だったと言えます。
新しく登場したものは、スピリット以外でもクリーチャー以外でも持つようになり、さらに普通にプレイした場合のメカニズム的関連性はなくなりました。
魂力から出来事がデザインされたことは以前に日記にしました(※2)。
この変更で、より出来事に近くなったと言えます。
出来事と違って1枚分の仕事しかしませんが、出来事のカードパワーを考えると、こちらの方が無難でしょう。

補足1
ここでは紹介されていませんが、キーワード・カウンターが再登場することが分かっています(※3)。
改善メカニズムとのシナジーが期待できるでしょう。

補足2
ここでは紹介されていませんが、ファイレクシア化したタミヨウが専用のキーワード能力「完成化」を持っています(※4)。
ファイレクシアマナと混成マナを合わせたような能力です。
わざわざ新シンボルとキーワード能力を作ったのですから、新ファイレクシアに再訪する際にはファイレクシアマナが再登場し、新しいファイレクシアンPWが誕生することでしょう。

※1
翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』の英雄譚
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035755/

※2
神河資料 - 魂力から生まれた出来事 その1
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/201912191946504568/
神河資料 - 魂力から生まれた出来事 その2
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/201912202042161638/

※3
Making Magic -マジック開発秘話- 2022.1.28 『世界』の創造 その1
https://mtg-jp.com/reading/mm/0035751/

※4
翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』をコレクションする
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035753/
神河現代 - プレビュー開始
神河現代 - プレビュー開始
神河現代 - プレビュー開始
ストーリー記事が完結したと同時に、プレビューが開始しました。

今後、様々なカードが公開されますが、それらを1つ1つ画像を載せたり、テキストを起こしたり、それらにコメントしたり、ということは難しいです。
カードの情報は、各種まとめサイトにありますし、その方が速報性に優れているでしょう。
ひとまず、今日公開された公式サイトの記事をまとめておきます。

ここに載せた記事でも、後から単独で取り上げて日記を書くことはあるかもしれません。

Making Magic -マジック開発秘話- 2022.1.28 『世界』の創造 その1
https://mtg-jp.com/reading/mm/0035751/

翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』のメカニズム
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035754/

ボーダーレス版《渦巻く空、開璃》のアートに関するお知らせ
https://mtg-jp.com/reading/publicity/0035756/

マスタリー
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/magic-digital/kamigawa-neon-dynasty-mastery-details-2022-01-27

翻訳記事その他 2022.2.9 『神河:輝ける世界』のブースター・ファンをライトアップする
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035785/

翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』の英雄譚
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035755/

翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』をコレクションする
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035753/

翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』製品紹介
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035752/

公式twitter
https://twitter.com/mtgjp/status/1486745974710018050

その他、非公式サイトの情報もまとめます。
『MTG 神河:輝ける世界』新カードプレビュー。18年に渡るあのサイクル最後の1枚が緑の神話レアに!
https://dengekionline.com/articles/115909/

プレビュー
https://twitter.com/AfterTtv/status/1486805230071201799
神河現代 - 公式ストーリー第16章
神河現代 - 公式ストーリー第16章
神河現代 - 公式ストーリー第16章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。
これで完結です。

 「目覚メヨ、最初ノファイレクシアン・プレインズウォーカー。ソシテオ前ガ最後トハナラヌデアロウ」

 ジン=ギタクシアスの声に、タミヨウは瞼を震わせた。彼女は身体を起こし、周囲の様子を確認した。研究室で目覚めたのは初めてではなかった。だが……それが普段通りだと感じたのは初めてだった。

 顔をしかめ、タミヨウは鞄に手を伸ばすと物語の巻物を取り出した。その紙を見つめると、書かれた言葉は金属的な光沢をひらめかせ、全く別の言語へと変化した。ずっとそうしてきたのかのように、彼女はファイレクシア語の文章を読むことができた。奇妙な満足感があふれた。

 ファイレクシアが彼女の新たな家だった。今や彼女はその一部だった――心も、身体も、魂も。

 腕を見下ろすと、光沢のある金属が奇妙な継ぎ接ぎのように明滅していた。それは再生されたジン=ギタクシアスの胸部と同じく、磨き上げられたばかりだった。

 その怪物は傍らで身動きをし、歯を鳴らしながら眩い光が流れるワイヤーを観察していた。それらはタミヨウの皮膚から近くの機械へと繋がれていた。

 この怪物には感謝の念しかなかった。タミヨウは常に家族を愛し、彼らを守るためなら何も厭わなかった。今や彼女は、その尽きることのない忠節でファイレクシアを守るのだ。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 16
メインストーリー第5話:次なる戦いへ
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035757/


今回も、大雑把な流れを抑えておきます。

[1] 魁渡たちはテゼレットを拘束するも、彼が現実チップをコントロールして、皇の灯を不安定にしたため、皇は現実チップを外した。
[2] 蜂起軍による永岩城の襲撃に対処するため、タミヨウが現実チップをつけて、監視メカを制御して四人を運ぶ。移動中、テゼレットが脱出し、監視メカは墜落。
[3] 再びテゼレットと交戦して拘束するも、彼が現実チップを通じてタミヨウをコントロールし、ポータルを起動して連れ去ってしまう。
[4] 皇は蜂起軍との戦いに勝利するも、灯の制御に限界が近づいたため、統治者の座を軽脚へと譲渡し、プレインズウォークした。
[5] 魁渡は、再び皇を、そしてさらわれたタミヨウを探す旅に出る。
[6] 捕らえられたタミヨウはジン=ギタクシアスの手により、初のファイレクシアン・PWとなった。

タミヨウのファイレクシア化、という衝撃的な結末を迎えました。
神河出身のPWということでストーリーでの活躍が期待されていただけに、なんとも残念です。
前回、ジン=ギタクシアスがアッサリ退場したのかとも思われましたが、むしろPWのファイレクシア化によりその地位を向上させています。

PWのファイレクシア化ということで思い出すのはかつてのカーンです。
油は昔から保持していたのですが、(PWの灯を失うまでは)ファイレクシア化はしていませんでした。
この点は、若月繭子さんが、PWがファイレクシアの油を持つ場合は、油は不活性になると、考察しています(※1)。
この考察が正しいとすると、今回のジン=ギタクシアスの研究により、PWでも油が活性化するようになった、ということでしょうか。

現状、それほどいい変化はなかったと言えます。
タミヨウの結末はもちろんのこととして、皇は灯の制御を一旦は可能になったものの結局はまた失いますし、魁渡は再び皇を探すことになります。
蜂起軍が鎮圧され、統治者の不在が解消されたことは、良かったと言える点です。
もっとも、他次元やPWのことを知らない、大勢の定命の視点からすれば、これで十分ハッピーエンドとも言えてしまうのですが。

また、精霊と定命の領域の統合については謎のまま終わりました。
今回のストーリーの整合性のために設けただけに過ぎない可能性もありますが、再訪した時にストーリー軸として残しておいたものであって欲しいところです。

※1
あなたの隣のプレインズウォーカー 第111回 カルドハイムで何があったのか
https://article.hareruyamtg.com/article/48288/
神河現代 - 公式ストーリー第15章
神河現代 - 公式ストーリー第15章
神河現代 - 公式ストーリー第15章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。

 我が家とはどこなのか、今や心から確信はできなかった。帰るべき場所とは、実際の場所である必要などないのかもしれない。

 帰るべき場所とは、大切な人々のことなのかもしれない。大切に思ってくれる人々のことなのかもしれない。

 そして魁渡は決して諦めなかった。多元宇宙を旅して自分を探し、連れ帰るために望んで怪物に対峙した。

 そんな彼を失いたくはない。

 軽脚と英子、そして香醍を社に残し、放浪者は永岩城を離れたかと思うと一閃の光とともにタメシの研究所に飛び込んだ。自らの到着を告げはしなかった。魁渡の姿を探しはしなかた、そして輝く金属の怪物の目が向けられた時、躊躇もしなかった。

 放浪者は天空から剣を振り下ろすように、ジン=ギタクシアスの首から胸までを裂いた。

 傷は深く、ジン=ギタクシアスの喉から発せられた金属の悲鳴は彼女の耳を貫いた。放浪者は魁渡とタミヨウへと急いだ。ふたりは手術台に、まさにこれから実験体にされるかのように拘束されていた。彼女は拘束具を一瞥すると。それも同様に切り裂いた。

 片腕で魁渡を引っ張り起こすと、意識を取り戻すようにその両目が瞬いた。

「な――何してるんですか?」 彼は朦朧としながら、その指はもはやそこにはない武器を探した。「まだです――俺はやれる」

 それはまさに、彼女が覚えている魁渡そのものだった――決して負けを認めない男の子。

「わかりませんか、私は貴方の命を救ったのですよ。それも私が覚えているかぎり、一日に二度も」 その両目が冗談めかして輝いた。「私の気を惹きたいなら、他の方法があるでしょうに」

 複数の足音が近づくのが聞こえた。相手も備えていたということ。

 だがそれは彼女も同じだった。

 神河の皇はベルトから短剣を抜いて魁渡に渡し、笑みを向けた。「離れている間に訓練を怠っていましたね? ですがついて来て下さいよ」

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 15
メインストーリー第4話:突入
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035748/


今回も、大雑把な流れを抑えておきます。

[1] 魁渡・皇(放浪者)・タミヨウは皇宮に帰還して会話していると、皇の灯の制御が限界に近づいてきたため、現実チップをつけることで抑えた。
[2] 現実チップの影響で実験室の様子が見え、皇の帰還を伝えられた蜂起軍が皇宮の襲撃を企てていることを知る。
[3] タミヨウが、実験室を破壊し、現実チップとのつながりを断つことで、PWの灯を制御する作戦を立案し、魁渡と同行する。皇も囚われた神を解放しようと同行しようとするも、軽脚と英子に制止され、城の中で守られることに。
[4] タミヨウと魁渡は実験室へ難なく到着。しかし、神はすでにおらず、神の次の実験体としてPWを求めていたテゼレットとジン=ギタクシアスの罠だった。交戦するも敗北し、二人とも囚われる。
[5] 現実チップでそのことを知った皇は、香醍の力を借りて灯を制御し、実験室までプレインズウォーク。ジン=ギタクシアスを一撃で切り裂き、囚われの二人を解放した。

前回に続き、今回も皇(放浪者)の強さが光ります。
さすがは剣術の達人にして歴戦の戦士といったところでしょうか。

ジンはこれであっけなく退場となるのか、はたまた「死は労働をやめる理由にはならん」と再登場するのか、気になります。
ヴォリンクレックスと違って、頭脳派ですから戦闘力は低くても仕方ありません。
そもそも、プレインズウォークによる瞬間移動で不意打ちというのが強力すぎるのですが。

また、彼らの実験は、神が物質と非物質(肉体と魂)を簡単に行き来することに注目したものだと明らかになりました。
やはりというべきか、狙いは神の力でした。
その力を使って何を企んでいるのでしょうか。
また、神が連れ去られてしまいましたが、神がファイレクシアンとして改造された姿で再登場するのでしょうか。

概略ではあっさりと皇が助けに行ったように見えるかもしれませんが、実際にはもっと苦悩する描写があります。
最後は、失いたくない大切な人を助けるために、立ち上がりました。
また、それを止めようとした軽脚を英子が制止したのも、弟の命を重んじたが故の行動です。
最初から友人のために動き続けた魁渡、家族のために中立のスタンスを取らなかった前回のタミヨウに続いて、今回も大切な人のためにキャラクターが動いています。
こうした展開は読んでいて心地よいものです。



その他、新しい情報です。

アリーナの情報、『神河:輝ける世界』のバンドルなど
https://mtg-jp.com/reading/publicity/0035758/
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/magic-digital/mtg-arena-announcements-january-26-2022
神河現代 - 公式ストーリー第14章
神河現代 - 公式ストーリー第14章
神河現代 - 公式ストーリー第14章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。

 そしてその時、龍が吠えた。

 魁渡が再び見上げると、メカの口の中の光は消え、装甲に覆われた喉には橙色の光が一直線に輝いていた。一瞬、そのメカは静止した――そして両断された身体が続けざまに地面に崩れ落ちた。もはや、何の危険もなかった。

 壊れた機械の背後に、ひとりの女性が立っていた。純白の髪、その手には一振りの剣。顔を上げると、その容貌が大きな帽子の下から現れた。その茶色の瞳を、魁渡はすぐさま認識した。

 最後に見た神河の皇は、まだ少女だった。だが年月は彼女を変えた。その瞳に深く宿した知啓は、百もの人生を経てきたかのようだった。ただ歳を経たのではなく、戦士として成長していた。プレインズウォーカーとして成長していた。

 放浪者。

 感情を抑えられないかのように、魁渡は胸に手をあてた。安堵に。

 友が、ついに故郷に帰ってきたのだ。

 屋根の上の人影には目もくれず、皇は魁渡へと向かってきた。彼女は魁渡だけを見つめていた。

 近くで別の動きを察し、魁渡は視線を離した。口元に柔らかな非難を宿し、夜空にタミヨウが浮遊していた。

「協力を提案しましたが、このような形ではありませんでしたよ」 タミヨウは手の中の巻物を広げ、簡素な頷きで皇の姿を認めた。

 タミヨウの両目が巻物を走り、すると屋根の上の人影は動きを止めた。ジン=ギタクシアスの手下たちはもはや駆けていなかった。彼らは探す目標を見失っていた。

「ここに留まらない方が良いでしょう」 タミヨウは低い声で言った。「再会を喜ぶにはもっと相応しい場所があります。そして不可視の呪文も永遠には続きません」

 タミヨウの魔法に隠れ、プレインズウォーカー三人は無言で大田原から離れていった。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 14
メインストーリー第3話:予期せぬ協調
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035745/


今回も、大雑把な流れを抑えておきます。
[1] 魁渡はテゼレットの調査を進め、彼が鼠人の村を襲撃した事件(※1)について歴演衆から情報を得て鼠人の村へ行き、事件の生き残りである那至のとこを尋ねる。村人が口を閉ざすので、ドローンによる偵察から情報を得て大田原へ向う。
[2] 道中でタミヨウと遭遇し、陛下の情報を聞き出せそうにないことから戦うことになり、互角に渡り合うも、最後は呪文で拘束される。テゼレットの名を出すことでようやく会話をする流れに。
[3] タミヨウの話によると、テゼレットは現実チップで香醍を支配しようとしたところ失敗し、代わりに皇がPWとして覚醒し放浪者となり、力を制御できないために帰還できない様子。タミヨウは協力を申し出るも、準備を整えてようとする彼女とは折り合いがつかず、単独でテゼレットを探し現実チップを奪うことを決めた。
[4] タメシの実験室に入ると、衰弱した神を見つけ、現実チップを入手した。ジン=ギタクシアスと遭遇し、雇われ忍者と交戦するも、途中で逃亡。
[5] 逃げた先で龍型のメカの攻撃を受けるかと思った一瞬、放浪者が現れ、それを一刀両断した。彼女と連絡をとっていたタミヨウの手引きにより、三人でその場を離れた。

主人公のピンチに仲間が駆けつける、王道の展開です。
しかも、それが行方不明となっていた友人なのですから。

事前情報では、「神河のエンペラーは見覚えのあるかもしれない人物です」と言われていました(※2)が、放浪者のこととは思いもよりませんでした。
また、灯争大戦のストーリーにおいて、放浪者はラルと組んでテゼレットを追う時、「私も、テゼレットと昔関わったのよ。あいつを知ってる。」と言っていました(※3)。
なるほど、このことだったのかと納得しました。
となると、放浪者を登場させた段階で、ここまで考えられていたのでしょうか。

また、ようやくタミヨウが登場です。
神河に来たのですから、当然でしょう。
いつ登場するのかと待っていました。
剣術の達人である魁渡とも渡り合えているので、基礎的な戦闘能力も十分ある様です。
学者肌であり中立を貫くスタンスですが、家族が絡むとなると話は別とのこと。
冷徹に知識を求めるだけではないという点もさることながら、PWの中では珍しく家族が平和的に暮らしていることが明言されている、タミヨウらしいと言えます。

余談
ところで、こうして正体が明かされた以上、放浪者のPWタイプは空欄から本名に変わるのでしょうか?

※1
テゼレットの襲撃事件については過去の公式ストーリー記事で、タミヨウの口からあらましが語られています。
Magic Story -未踏世界の物語- 2016.10.6 解放
https://mtg-jp.com/reading/ur/0017708/

※2
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第121回 ネオ神河まで何マイル?~
https://article.hareruyamtg.com/article/55004/

※3
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第93回 指名手配犯、テゼレット~
https://article.hareruyamtg.com/article/36135/

神河現代 - 公式ストーリー第13章
神河現代 - 公式ストーリー第13章
神河現代 - 公式ストーリー第13章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。
本日2本目の更新です。

 タメシは顔を上げ、目を開き続けようとこらえた。「魁渡くん……」

 魁渡はかぶりを振るだけだった。こんなことはあってはならない。また友を失うなんてことは。

 けれど死の方は、そうは思っていない。

 タメシの声は燃え殻のようにかすかだった。「私は……幾つもの過ちを犯した。だがその最たるものは、君に嘘をついたことだ」

 背後で炎が勢いを増すのを感じた。タメシを動かすことはできない――それは必然的な結末を速めるだけだろう。そして、もう時間は僅かしか残されていない……

 気にしなくていい、そう言ってやりたかった。この最期の時に、安らぎと許しを与えてやりたかった。友の最期に与えてやれる全てを。

 けれど魁渡にはもうひとり、友がいる。そちらはまだ助けられる。

「陛下について知ってることを教えてくれ」 涙をこらえ、魁渡は懇願した。「あの金属の男とどうやって知り合った?」

 タメシの瞳から光が消えかけた。

「駄目だ!」 魁渡は友のローブを掴み、強く引いた。「まだ逝くな。本当のことを教えてくれ」

 タメシの今際の息が、ほんの僅かにこらえるように途切れた。心折れるほどの、取返しのつかない後悔とともに彼は魁渡を見上げた

 もう時間はなかった。

「テゼレット」 何かの呪文を破るようにタメシは囁いた。そしてこと切れた。

 魁渡は声を詰まらせて泣いた。頬を流れる涙は皮膚を焼くようだった。炎の熱を背中に感じた。危険なほどに迫ってきている。

 歯を食いしばり、魁渡はタメシの目を閉じると静かに別れを告げた。そして間違っているとは思いながら、友のポケットに手を入れて研究室のカードキーを取り出した。

 タメシは死んだかもしれない、けれどまだやることがある。

 狸のドローンが隣に現れ、自ら仮面の形状をとった。魁渡はそれをまとい、友の死体から立ち上がると、肩にのしかかるほどの苦悶に耐えながら歩き去った。

 背後で、倉庫は炎に包まれた。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 13
メインストーリー第2話:嘘と約束とネオンの輝き
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035742/


これまでは、魁渡や神河の歴史の紹介といった趣でした。
今回からは、タイトルにもある通り、メインストーリーです。

今回も、大雑把な流れを抑えておきます。

[0] 皇失踪の後、母聖樹へ向い、PWに覚醒した(情報としては既出。詳細は※1)。
[1] 失踪から十年後、今は皇国の助言者として仕える姉から、親友であるタメシが金属の腕の男と会っているとの情報を得て、後を追うことにした。
[2] タメシの研究室に潜入し、謎の装置の設計図と、彼がこれから誰かに会う予定があることを知り、会合場所である下層街へ赴く。
[3] タメシの行方を追うと、金属腕の男でも未来派でもない、謎の生物を発見した。
[4] 謎の生物は神河の生物を用いた実験を行っており、証拠隠滅のため手下に実験施設を爆発させた。
[5] 炎上の中発見したタメシは致命傷を負っており、裏切りの自白とテゼレットの名前を口にして死亡した。

ストーリー上明言されていませんので「謎の生物」としましたが、その描写やアートから、ジン=ギタクシアスのことでしょう。
金属腕の男がテゼレットであるということは予想されていました(※2)。
しかし、まさかファイレクシアまで関わっているとは予想外でした。
最近でも『カルドハイム』に《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス/Vorinclex, Monstrous Raider》が登場していました。
新ファイレクシア再訪への準備ということでしょうか(※3)。
テゼレットとは協力体制にあるのか、単に偶然居合わせただけなのか、その狙いは何か、気になることばかりです。

その他、新しい情報です。
ネオ神河プレビューの日程
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/feature/where-find-kamigawa-neon-dynasty-previews-2022-01-24

Mark Rosewaterによる『神河:輝ける世界』のヒント
https://markrosewater.tumblr.com/post/674270904195366912/maros-kamigawa-neon-dynasty-teaser

※1
神河現代 - 公式ストーリー第1章
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202112172006063894/

※2
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第123回 ネオ神河にStart Your Engines~
https://article.hareruyamtg.com/article/57899/

※3
実の所、ファイレクシアも(神河ほどではないにせよ)長く再訪していない次元です。
明らかに続きがある終わり方をした上に、イニストラードやラヴニカは何度も再訪しているだけに、その放置ぶりが気になっていました。
MTG三大巨悪のうち、エルドラージやボーラスが一区切りついたので、ようやく登場する段階になった、ということでしょうか。

神河現代 - 公式ストーリー第12章
神河現代 - 公式ストーリー第12章
神河現代 - 公式ストーリー第12章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。
今日も1日2本更新です。もう1本は別記事にて取り上げます。

 魁渡は頭に血が上るのを感じた。「みんな探す場所を間違ってる。俺が見た男を追いかけるんじゃなくて、未来派を犯人にしようとしてる。俺が見たあいつが犯人だ」 その声は露骨な怒りを帯びていた。

 誰も耳を傾けようとはしなかった。魁渡の言葉には。

 騒音と霧に負けまいと、彼は叫んだ。「あの男は逃げたんだよ。誰も何もしなかったら、もう二度と陛下の姿を見られないかもしれないのに!」

 両目に忠告を宿し、軽脚が振り返った。「魁渡さん、自室に戻りなさい。これは皇国の問題です」

 その時、彼は感じた――いや、ずっと以前からわかっていた。

 ここは自分の居場所ではない。

 一度だって、そうではなかった。

 香醍の間から離れながらも、頬を流れる怒りの涙が止まらなかった。そして自室に着いた時には、何をすべきか彼はわかっていた。

 英子を置いていくのは心が裂かれるようだった。けれど姉は永岩城に居場所がある。目的がある。

 そして、求めていたものではなくとも、今や自分にもひとつの目的があった。

 神河のどこかにいる、あの金属の男を探し出す。友を見つけて連れ帰る。そしてそれまでは、決して皇宮に再び足を踏み入れはしない。

 その夜、魁渡は永岩城の最後の壁を越えた。振り返ることはなかった。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 12
メインストーリー第1話:永岩城の異邦人
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035741/


これまでは、魁渡や神河の歴史の紹介といった趣でした。
今回からは、タイトルにもある通り、メインストーリーです。

それだけ長文になっています。
ひとまず大雑把な流れを抑えておきます。

[1] 魁渡は幼い頃から永岩城にて訓練を受け、皇とも友好があった。
[2] ある時、皇との会談に訪れた未来派との会話から、技術を規制する管理体制に疑問を持ち始める。
[3] 自分の考えが変わったことを皇に話すと、師匠である軽脚(けいぎゃ)先生に告げ口をされ、自分の居場所が永岩城とではないと感じる。
[4] 皇が失踪したその日、魁渡は永岩城にて、未来派とは様子が異なる、金属の腕の男と遭遇し、彼が犯人と確信する。
[5] そのことを周囲に報告するも、未来派の仕業だと誤解されたため、独自で調査することを決意し、永岩城を出る。

魁渡が失踪した皇を追うのは、個人的な友好関係からであり、組織への忠誠心ではありません。
こうした点は、公式ストーリー第1章(※1)でも触れられていましたが、その友好関係や、組織への考え方の変遷、そして失踪事件当日の様子が詳細に語られています。

公的な大義でなく個人的な思惑で動くあたりは、旧神河の梅澤俊郎にも通じるところがあります。

※1
神河現代 - 公式ストーリー第1章
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202112172006063894/
神河現代 - 公式ストーリー第11章
神河現代 - 公式ストーリー第11章
神河現代 - 公式ストーリー第11章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事と新カード《天空に至る母聖樹》のアートが公開されました。
まさかの1日2本更新です。

 神河の歴史の大半において、力とは特権階級だけのものであった。香醍(きょうだい)の祝福とともに次元を動かす皇国、多くの将軍、そして神の力を使う者たち。だが近年では、さまざまな革新によってあらゆる人々がより広範囲かつ安価に力を利用できるようになり、旧体制は重大な混乱に直面した。この革新の鍵となったものはふたつ。霜剣山市(そうけんざんし)の悪忌(あっき)の職人たちが創案した増強機械、そして精霊の領域から力を直接引き出すサイバ未来派の手法だった。

 悪忌の職人には発明と創意工夫の長い伝統があり、彼らは希少な資源を有効活用するだけでなく、神に与えられた力も用いて大きな効果を発揮した。増強機械によって、皇国や樹海の兵団の一部の者たちのように神との深い繋がりがなくとも、与えられた力を更に効率よく使用できるようになった。

 同時に、サイバ未来派は精霊の領域の性質を試すために統合の実験を執り行った。その意外な副産物として、彼らは神との繋がりを必要とせずに魔力を直接引き出す方法を発見した。霜剣山市の職人と未来派は直接協働したわけではなかったが、ふたつの技術者集団はすぐに協力して新技術の急発展の基礎を作り上げ、それはこの次元へと爆発的に広がった。

 だがこの近代化の全てが歓迎されたわけではなかった。足元の安定が揺らぐのを感じた皇国は、新技術の流れを制御しようとした。また、この新技術の発展は樹海の兵団と呼ばれる新たな組織を隆盛させた。技術をそのように無制限に使用することは、無謀で危険な方法で力を引き出すことであり、ふたつの領域の構造に取り返しのつかない損害を与える恐れがある――そう信じる者たちである。

 神の間では、意見はさまざまである。抵抗する神もいるが、物事がどのように変化するのかを見たがっている神もいる。多様な意見はあるものの、技術に関連する新たな神が出現している。多くの者はそれを、技術的社会的大変動によって、神河の魂そのものが後戻りできない形で変化している証であるとみなしている。

 そして時代は現代へと移る……

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 11
神河史譚:当世
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035738/


ネオ神河がサイバーパンク世界になった経緯が語られています。
外部から技術が持ち込まれた説も囁かれていましたが、現地人による技術革新によるものでした。

ただ、その技術革新には2つあります。
1つが神に与えられた力を増強するものであり、もう1つが神との繋がりなしに魔力を引き出すという、対になるものです。
いずれにしても、神との深い繋がりがあるものだけに限られていた力が、多くの定命にも持てるようになりました。
皇国は支配力の点から、樹海の兵団は次元全体の点から、危惧しているようです。
そして定命だけでなく、神の中でもこのような流れに抵抗するものがいます。
一方で、この変化を面白がっている神もおり、実新たな技術にまつわる神も登場しているようです。

このような神河の変化をもたらした技術革新の1つは悪忌によるものでした。
かつてはシャーマンとして神との繋がりを持っていたので、「神に与えられた力」を増幅する方法を編み出すのは自然な流れでしょう。

一方の技術を編み出した、「サイバ未来派」とは一体何なのでしょうか。
ネオ神河発表時から連想されていた、『ニンジャスレイヤー』に出てきそうな単語です。
どのような種族なのか、何を目的としているのか、誰がそのトップなのか。
詳細はこれから明らかになっていくことでしょう。
なお、神との繋がりなしとは言え、「精霊の領域から力を直接引き出す」とあるので、結局のところ、神河における魔力の根源は精霊の領域にあるようです。

「そして時代は現代へと移る……」との一言で締め括られていることから、旧神河とネオ神河の間のストーリーはこれで一通り終わりのようです。
次回から始まる、現代のストーリーを楽しみにしています。
神河現代 - 公式ストーリー第10章
神河現代 - 公式ストーリー第10章
神河現代 - 公式ストーリー第10章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事と新カード《天空に至る母聖樹》のアートが公開されました。

 母聖樹(ぼせいじゅ)は都和市(とわし)の中心に立っている。神河最古の木であり、この都市内に残された樹海の唯一の名残である。

 当世として知られる時代が始まると、都和市は人口増加に対応するため急速に拡大した。ムーンフォーク、鼠人、人間、悪忌(あっき)までもが共に生活し、かつての時代には考えられないような様子で混じり合った。都市が拡大するにつれ、それは樹海を侵食し始めた。木は新たな建築のために切り倒され、森の神の多くはいつしか追いやられた。神は怒り狂って抵抗し、森の奥深くから現れて新たに建造された建物を破壊し、建築家たちに呪いをかけた。

 やがて当時の皇は、神の攻撃とそれに続く都和市の建築家たちの報復は、定命と神の平和的な関係を今一度台無しにすると考えて仲裁に入った。彼は合意を取りなした。都市はこれ以上の森への拡大を止める。一方の神は都市を攻撃せず、都市計画の邪魔もしない。既に建造を始めた土地の開発は続けても良いが、ひとつの例外がある。母聖樹を切り倒してはいけない。それは建造と戦いの間に、街の内に取り込まれていた。更に、樹海は神の許しがない限り、あらゆる定命を締め出していた。

 外への拡大を止められ、都和市は上方への成長を余儀なくされた。高層建築が街に満ち、母聖樹はすぐに空の支配権を失った。

 だがその時、長く沈黙を続けていたその古木が再び成長を始めた。それは途方もない大きさと高さに成長し、取り囲む最も高い建築をも追い越した。建築家たちはその高さに対抗しようとしたが、新たな「最も高い建築物」が建つごとに、母聖樹は更に成長した。そのメッセージは明白だった。今ここにこの都市は立っているかもしれないが、最初にあったのは森。それを忘れるなと。今日、母聖樹は都和市最大の構造物であり、広げた枝は都和市の大半へとほぼ絶えない影を投げかけている。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 10
神河史譚:天空に至る母聖樹
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035737/


今回は母聖樹が主役です。
旧神河では《すべてを護るもの、母聖樹》として登場しており、ネオ神河においても《耐え抜くもの、母聖樹》として登場することが確定しています(※1)。

新旧通じて存在し続けている母聖樹ですが、その様子は大きく変わっているようです。
かつては周りに樹海が広がっていたものの、都市開発に伴い、それらは失われていきました。
それをきっかけとして森の神との対立が起こり、平和的解決のためにこれ以上の樹海への開発は止まりました。
その象徴とも言えるのが母聖樹であり、進行中の土地開発が止められた唯一の例外でした。
その後も、高層建築に呼応して母聖樹は成長し始め、かつてその地に森があったことを訴えています。

母聖樹はすでにドラゴン転生の地であることが明かされていました(※2)。
それに加えて、このような都市開発の物語にも関わる場所です。
ネオ神河のこれからのストーリーにおいても、重要な意味を持つ舞台であることでしょう。

※1
お知らせ 2021.12.20 『神河:輝ける世界』のシビれるお披露目
https://mtg-jp.com/reading/publicity/0035690/

※2
神河現代 - 公式ストーリー第6章
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202201182047168292/
神河現代 - 公式ストーリー第9章
神河現代 - 公式ストーリー第9章
神河現代 - 公式ストーリー第9章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事と新カード《麒麟の教え》のアートが公開されました。

  今日、大蛇人(おろちびと)は神河の至る所に生きている。だが昔、元々の彼らは樹海の住人であり守護者であった。そして古の伝説によれば、大蛇人はかつて神河の他の定命種族と同じような脚を生やしていたという。

 何世紀もの間、大蛇人は主に樹海を生活の場とし、森の神と調和して生きてきた。だが都和市(とわし)の建造とそれに伴う森林破壊は森の神を激怒させた。神は森の中に住まうあらゆる定命を追い出し、森を定命から閉ざした――大蛇人も含めて。

 先祖代々の地を追われ、大蛇人は適応しようともがいた。悪忌(あっき)の新たな発明や領域の統合に伴うムーンフォークの実験は革新の波を煽り、新たな力の入手法をもたらした。だが大蛇人はその流れに取り残された。更に悪いことに、彼らはかつてのように神の力を引き出せなくなっていた。

 困り果てた大蛇人は神に助力を懇願した。やがて、その呼びかけに応えたのは麒麟だった。新たな守護神になってほしいと大蛇人は願ったが、麒麟はそれを拒んだ。そうではなく、一連の務めと探求を通して、麒麟は大蛇人の力の喪失の背後にある真実を理解させた。定命に怒り狂った樹海の神は彼らを森から追い出しただけでなく、自分たちとの力の繋がりをも断ち切ったのだった。大蛇人が力を取り戻すには、まずその意志を見せ、森の神へと犠牲を捧げねばならない。腕と脚をそれぞれ一対捧げ、より簡素な姿に戻る。問題は、そのような変化によって今日の神河への順応は更に困難になるということだった。

 大蛇人は同意しないと神は考え、故意にそのような要求を伝えたのだった。しかしながら神が驚いたことに、大蛇人はそれを躊躇なく了承するだけでなく、残る腕すらも差し出すと申し出た。その献身に心を動かされ、神は以前を越える規模の力を大蛇人に与えた。そして全ての肢を奪うのではなく、その力によりよく繋がる新たな姿を与えた。

 この物語のどこまでが真実か、そしてそのどれほどが、若き大蛇人に神への崇敬と献身の大切さを教えるための寓話なのかはわかっていない。どちらにせよ、それは大蛇人の最もよく知られた物語のひとつであり、この花瓶と生け花のような芸術的表現において人気の題材である。この花瓶は大蛇人の新たな姿を祝すように脚のない姿を描いており、飾られた花は麒麟を想起させるように魔法的に伸びている。このような生け花は多くの大蛇人の家で見ることができる。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 09
神河史譚:麒麟の教え
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035734/


今回は大蛇人に起きた変化、樹海を出たこと、脚を失ったことにまつわる物語です。
以前、公開されたアート(※1)においても、大蛇人には脚がありませんでした(画像2枚目参照)。

これまでの出来事との時系列における前後は、明記されていません。
というより、どこまで事実か寓話かハッキリしていません。
仮に事実だったとして、『統率者(2015年版)』の《大蛇の大魔導師、かせ斗》は明確に足があるため、この出来事よりも前のキャラクターということになります。
もっとも、当時は「新神河の大蛇人には脚がない」設定がなかった、というだけのことかもしれませんが。
いずれにせよ、新神河での再登場はない訳です。

かつての住処である樹海を離れた大蛇人は、神との力の繋がりを失ったことで、新たな環境に適応できませんでした。
そこで、神である麒麟に助けを申し出たところ、脚と引き換えに、かつてを上回るほどの神との力の繋がりを得たとのことです。
本来なら、手も脚も失うよう、無理を前提で神が吹っかけたのですが、大蛇人が承諾したことに感銘を受け、このような形になりました。
守護神らしからぬ振る舞いですが、神話らしくはあります。

脚を失ったのはすでにアート上で表現されています。
一方、神との強力な繋がりはカードやメカニズムにおいて表現されることでしょう。

※1
神河現代 - 新アート多数
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202201121929544054/

その他、新しい情報です。
《梅澤悟》の壁紙が公開されました。
https://magic.wizards.com/en/articles/media/wallpapers

神河現代 - 公式ストーリー第8章
神河現代 - 公式ストーリー第8章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事と新カード《啓蒙の時代》のアートが公開されました。

 神河の職人たちは、啓蒙の時代を祝するために絹の刺繍の壁掛けを織り上げた。

 香醍(きょうだい)の導きと知啓とともに、皇国は長く続く平和と繁栄の時代を迎えた。芸術が花開いてあらゆる街路に演者が立ち並び、神との関係改善が図られ、定命は魔法に満ちた調和ある人生を送った。水面院(みなもいん)は、生活を向上させる研究を行う透明性を約束して再建された。新たな法が作成され、あらゆる民への――定命も精霊も――公正な扱いが確保され、指導者たちへの信頼が新たにされた。

 数十年、数百年が過ぎると、神河の定命たちは住処を共にする神の増加に気付いた。それらの中には友好的な神もいたが、多くはむしろ狼狽しており、危険ですらあった。神に仕えて生きてきた樹海の兵団が調査に乗り出した。彼らは混乱した神をこの世界に吐き出す空気中の奇妙な裂け目を発見した。定命と精霊の領域が重なり始めており、ふたつはやがてひとつの世界へ統合すると思われた。

 樹海の兵団はこの発見を永岩城(えいがんじょう)と大田原(おおたわら)に伝えた。彼らは皇国や水面院と協力し、後に「統合のゲート」として知られるものを開発した。水面院の学者たちはその知識を用いてゲートの機構を改良した。皇国は兵を用いてゲートを建造した。そして樹海の兵団は神を歓迎し、新たな故郷へと迎えた。力を合わせ、定命は新たに発生した裂け目の周囲にゲートを建造していった。神が安全に、新たなひとつの神河の一部となれるように。

 この壁掛けに描かれた三人は、統合のゲートを開発した定命の三組織を体現している。歴史的かつ抽象的な解釈で空に描かれた裂け目を中心として、彼らは次なる神の訪問者を迎えるべく待ち構えている。樹海の兵団を象徴する僧は片手を挙げ、この素晴らしき繁栄の時代を導いている。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 08
神河史譚:啓蒙の時代
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035729/


今回も、旧神河と新神河の間を補完する内容を語っています。
時系列は、前日の《戦乱時代》の後でしょう。

再び平和が訪れたのですが、その後にまた変化がありました。
精霊の世界の神が、定命の世界に送り込まれる、裂け目が生じたことです。
神自身が困惑していることから、神の乱のように意図的に移るものには思えません。

その後、樹海の僧侶、皇国の兵、水面院の学者とが協力して「統合のゲート」なるものを開発することで、神が安全に移り住めるようになったとのことです。
今回のアートはその偉業を記念したものでしょう。

神の乱より前の神河は、神と定命との世界は分け隔てられていました。
終戦後にまた戻るとなると、神との関わり方はどうなるのかと思っていましたが、神の乱ほどではないにせよ、以前よりも定命の世界に神が多くいるようです。
「統合のゲート」の詳細は不明なので、今後のストーリーやカードで語られる可能性を期待しています。
神河現代 - 公式ストーリー第7章
神河現代 - 公式ストーリー第7章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事と新カード《戦乱時代》のアートが公開されました。

 神河の職人たちは、その作品に物語を吹き込む力を誇っている。傑作の刀の柄こそ、荒廃の戦乱時代の歴史に形を与える最高の場所であると彼らは感じた。

今田魅知子(こんだ みちこ)の順調な統治の後、彼女の子孫たちは偉大な神である香醍(きょうだい)とともに、魅知子の遺産を保ち秩序と正義を神河に確立しようと精力的に尽くした。しかしながら世代を経るにつれ、その高貴なる従事は王家の内紛にとって代わられた。

 やがて、ある皇が後継者のないまま若くして死すと、後継者争いが勃発した。ある者は皇の弟を、またある者は皇の夫を支持した。永岩城(えいがんじょう)は全面戦争に陥り、それが国全体へと広がると、各地の有力者たちは個々の実権を握る好機と判断した。貴族も平民も関係なく、多くの命が奪われた。

 山崎一族は何十年にも渡って今田家の軍を支え、民への揺るぎない忠誠で名高かった。敵対し合うふたりの後継者たちは神河の民を裏切り、危険にさらしている――そのような思いを抱いた山崎一族の兵士がいた。皇国の危険な勅令に反抗した先祖の物語に感銘を受け、彼は皇位争いを終わらせるべく自ら名乗りを上げた。彼は前皇の夫の暗殺に成功したが、次にその弟のもとへと向かうと、標的は武装して玉座の間にて待ち構えていた。

 香醍は自身の居室にてそのような対立を目にし、我慢の限界に達した。彼女は統治者としての今田家の特権を剥奪した。以来、皇は一般市民から選ばれており、血筋で選ばれることは決してない。現在では、香醍は気高い資質と国への献身から統治者を選んでいる。

 この刀は現在の執政者たちから、自戒として発注されたものである。神河が自滅の危機にあった時代、山崎一族の兵士が玉座の間に押し入り、皇の弟に対峙する瞬間を描いている。現在の皇は謎めいた失踪のさなかであるが、この作品は過去の罪を忘れてはならないと思い出させてくれる。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 07
神河史譚:戦乱時代
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035723/


《山崎兄弟》の系譜であろう山崎一族に触れてはいますが、彼らが主役ではありません
(もっとも、こうして名前が出てきた以上、新カードに山崎一族が登場する可能性は上がったと言えます)。
特定の人物というより、神河の歴史の話です。
皇帝は最初は血統で選ばれていたのですが、大規模な戦乱を生んでしまった反省から、一般市民から選ばれるようになりました。
現実でも聞いたことのあるような話です。

今回も旧神河のその後ではありますが、以前取り上げた今田魅知子の統治(※1)よりもさらに後の話となっています。
このまま、現代の神河までの歴史を、主要な出来事を抑えながら進んでいくのでしょうか。
転生したドラゴン(※2)や、旧神河にいなかった皇帝の誕生(※1)など、新旧神河の1000年以上もの間に起きた変化を少しでも伺い知ることができれば幸いです。

※1
神河現代 - 公式ストーリー第4章
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202201142131065550/

※2
神河現代 - 公式ストーリー第6章
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202201182047168292/


神河現代 - 公式ストーリー第6章
神河現代 - 公式ストーリー第6章
神河現代 - 公式ストーリー第6章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事と新カード《龍の神の再誕》のアートが公開されました。

前回に引き続き、今回も旧神河のその後を描いたものです。

 龍たちは神河における最も強大かつ不朽の神でもあった。だがそれほどの存在ですら、苦痛と死からは逃れられない。

 神の乱に関わった龍の多くは酷い傷を負い、あるいは殺された。陽星(ようせい)は永岩城(えいがんじょう)を守護して死んだ。珠眼(じゅがん)は樹海の僧たちを助けて斃れ、京河(けいが)は水面院(みなもいん)を守ろうとして殺された。数世紀の後、黒瘴(こくしょう)はある鬼の攻撃から竹沼(たけぬま)の住民たちを守って殺された。龍たちの中でも、流星(りゅうせい)だけが無傷でその後を生き延びていた。

 この龍たちは定命の領域における最強の守護者であったが、そのほとんどが死したために、悪意あるまた別の存在がすぐに蹂躙を始めた。戦乱時代、鬼の猛攻の波が吹き荒れ、それは次元全体を脅かす「衰退の夜」として知られる出来事で頂点を迎えた。

 反撃のため、大蛇人たちは守護者である珠眼を蘇生させる強力な儀式を執り行った。儀式は成功し、珠眼と流星は結束して鬼を撃退した。

 だが珠眼は違和感に気付いていた。死している間に、次元そのものが変化していたのだ。今なお強大ではあるが、彼女はかつてと同じように神河と繋がってはいなかった。この次元に帰還し、正しい姿で存在するならば、新たな転生体の龍がふさわしいだろう。

 珠眼はもう三体の龍の精髄を集める旅に出ると、それら全てをひとつの卵の中に安置した。彼女と流星は望んで自らを卵の中に横たえ、深い眠りについた。その卵は母聖樹の中心に封じられ、五十年かけて温められた。やがてそれが孵化すると、新たな姿を得て生まれ変わった五体の龍が現れた。

 このシルクスクリーン画は、新世代の龍の神の誕生を描いたものである。この作品において珠眼は、龍たちを育て再誕をもたらすという最も重要な役割を担っている。龍たちの再誕は、この次元の新たな希望と平和の潮流の先駆けとなった。年月が過ぎると、様々な組織がこの新しき龍たちの姿に発想を得て、自分たち自身の視覚的モチーフを築いた。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 06
神河史譚:龍の神の再誕
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035723/


今回の主役は5体のドラゴンです。
うち赤のドラゴンは《燃え立つ空、軋賜》という新カードが既に公開されています(※1)。
名前が流星から軋賜へと変わったのは、生まれ変わったことに伴うもののようです。

神の中でも上位に位置するドラゴン達だけに、現代においてもそのまま健在かと思っていたのですが。
ただ、亡くなった理由はいずれも、定命の者たちを守ろうとした、
という守護神としての使命を果たしたものなので、格落ちには感じませんでした。

これまでのストーリーと比較して、過去と現代の神河次元の繋がりを詳細に語っている点が面白いところです。
こういった点があるからこそ、再訪する意義があるのだと思います。

他の新しいドラゴンや、転生の舞台となった母聖樹なども、どのようなカードになるか楽しみです。
特に珠眼は、転生物語における中心的存在であり、旧カードの力不足を汚名返上できるか、といった点で気になります。

※1
神河現代 - 新カード《漆月魁渡》など
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202112172047514542/

その他、新しい情報です。

こちらマジック広報室!! 2022.1.17
2月11~17日開催の『神河:輝ける世界』プレリリースに参加して「ちびキャラお守り」をゲットしよう!
https://mtg-jp.com/reading/kochima/0035721/

神河現代 - 公式ストーリー第5章
神河現代 - 公式ストーリー第5章
神河現代 - 公式ストーリー第5章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。

前回に引き続き、今回も旧神河のその後を描いたものです。
今回の主役である梓は、神の乱によって神河次元に起きた変化を記録していました。

梓(あずさ)は樹海の僧団に属する旅の修行僧であった。彼女は常に放浪癖に取りつかれていたが、神の乱の後にその放浪はそれまで以上に目的を持ったものとなった。旅の中、彼女は神の乱に影響を受けた者たちの生活や物語と、定命と精霊の領域が互いに影響し合う変化についての記録を始めた。生涯を通じて梓は何十冊もの日誌を記し、それは神の乱の後の神河の記録を保存するための重要な文書となった。

だが旅をするごとに、次元そのものの性質の変化に伴い、過去が無言で忘れ去られることへの危機感を梓は抱くようになっていった。物語や歴史の記憶を保存し、未来の世代へと生かし続けるため、暦記(れき)とともに彼女は歴演衆(れきえんしゅう)を創設した。

霜剣山(そうけんざん)地帯、天戸(てんど)の峰へと向かったところで梓の消息は途絶えている。何世紀もの間、彼女の運命は知られていなかった。だが最近、歴演衆の現在の長である五木(いつき)が神の許しを得て樹海に入り、見捨てられた森の社に隠されていた梓の最後の日誌を発見した。日誌は一部が残るのみだった。その最後にはこれまでに見たこともない、「氷と霜、木々はよじれた螺旋で伸び、雪の中を奇妙な獣が泳ぐ」という地が記述されていた。梓が発見したのは神河の未踏の地か、それとも全く異なる場所か、それは多くの憶測をもたらした。彼女はいかにしてか精霊の領域へと入り込み、定命の知覚を通すことなく自らそれを垣間見たのだと信じる者すらいる。梓が最後に訪れたと思われる、この伝説的な地を発見しようという試みは成功していない。

 この重要な発見を記念し、歴演衆は梓の最後の日誌に記されていた詳細な場面と物語を描いた着物の製作を依頼した。その物語の幾つかは、既知の出来事へと新しくかつそれまでに知られていなかった視点をもたらした。神の乱にて破壊された水面院(みなもいん)、その首席司書であるあざみについての記述もそれである。この着物は創設者の偉業を示すものとして歴演衆本部の入り口に飾られ、訪問者を歓迎している。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 05
神河史譚:梓の幾多の旅
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035720/


そして、その記録を後世に伝える、歴演衆という組織を創りました。
新カード《梓の幾多の旅》のアートに描かれている着物は、彼女の偉業を称えるために新たに制作されたものだそうです。
一方で、その横にある髪飾りは、かつての《迷える探求者、梓》のアートで描かれた彼女の装飾品そのものでしょうか。

歴演衆なる組織、その長である五木、梓の日誌、日誌の最後に描かれた未知の領域など。
今回の記事には、現代の神河にストーリーやカードで登場しそうな要素が多く、今から楽しみです。
神河現代 - 公式ストーリー第4章
神河現代 - 公式ストーリー第4章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。

旧神河のストーリーの要約が続きましたが、今回は、旧神河のその後を描いたものです。
第2章で描かれた神の乱について、詳らかに真実を明らかにし、神河の新たな統治者となる今田魅知子の様子を描いています。

 神の乱からの復興は簡単ではなかった。長年にわたって続いた戦と争いは大地とその住人に大きな被害をもたらしていた。神河の住人たちにとって、神の乱をもたらした原因は未だ大半が謎であり、不信と敵意は根深かった。父親がもたらした傷を癒すため、今田魅知子(こんだ みちこ)は平和と調和を回復させる責務を引き受けると、そのために偉大な神の香醍(きょうだい)と手をとり合った。

 この協力体制は恐れと疑念で迎えられた。神河のほとんどの住人にとって、君主 今田(こんだ)こそが怒れる神からの庇護者だったのだ。今田の娘と大口縄(おおかがち)の子がそのように密接に協力するというのは衝撃的かつ不自然であり、魅知子の奮闘はあらゆる方面からの抵抗に遭った。神河を真に癒すには、人々に真実を知ってもらうしかないと魅知子は悟った。香醍の祝福を受け、彼女は神の乱の起源を明かした。

 後世の歴史家は、魅知子の行動は真の復興へと繋がり、定命と神との調和的協力への道を開いたと述べている。だが当時、魅知子の行動はこの次元を復興するという彼女の試みに更なる困難をもたらした。多くの者が、今田の娘である魅知子はその役割に相応しくないとして彼女の復興活動を拒んだ。真実を受け入れられず、抵抗を続けた者もいた。だが魅知子の決意は決して揺らぐことはなかった。真実と行動だけが過去の罪を正す、彼女はそう信じていたのだ。

 この精巧な扇子は、真実の運び手としての、癒し手としての、神河を統一した人物としての魅知子を描いている。生前の魅知子は皇の座を受け入れなかったが、死後にその称号が与えられ、彼女は新たな神河の初代皇とみなされている。この扇子にて、彼女は今田の家紋が描かれた衣服をまとっている。自分は父の遺産から目を背けていない、影の内に隠していないと示すため、人生を通して魅知子はそれを身に着けていたのである。

引用元
神河:輝ける世界 EPISODE 04
神河史譚:魅知子の真理の支配
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035716/


今回も、新カード《魅知子の真理の支配》のアートが紹介されています。 
ただ新しいアートが分かったというだけでなく、父の犯した罪を忘れない証という背景設定上の意味があるという点が、味わい深いです。

また、現代の神河において皇帝が行方不明となっていることは第1章で明かされていましたが、その初代皇帝が今田魅知子であることが判明しました。

書籍「神河物語 公式ハンドブック」P.4より引用
しかし、日本における史実と異なり、神河に帝は存在しない――大小さまざまの大名たちが、ただ覇を競っている世界なのである。


そう、「将軍」はいましたが「帝」はいなかったんですよ昔の神河。2000年の間に政治体制が変化したのか、あるいは「突然この世界に姿を現し、科学技術で神河を統一した皇帝は~」みたいな展開なのか。いやこれは単なる妄想ですが。

引用元
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第121回 ネオ神河まで何マイル?~
https://article.hareruyamtg.com/article/55004/


かつての神河には皇帝はいませんでした。
若月女史も2000年の間に何があったのか、と考察していました。
しかし、あの旧神河のストーリー完結後、それほどの間もなく皇帝が誕生した、というのが真相だったようです。
今田魅知子の死後、ということなので、2000年どころか、100年もないでしょう。
神である香醍と深い関わりにある、今田魅知子が皇帝になったということは、その後の皇帝も神と何らかの関わりがある人物、ということかもしれません。
神と対立していた旧神河とは逆に、神との協力関係がストーリーでもメカニズムでも表現されるのではないかと予想します。

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