神河現代 - 公式ストーリー第17章
神河現代 - 公式ストーリー第17章
神河現代 - 公式ストーリー第17章
公式サイトで、ネオ神河のストーリー記事が公開されました。
統率者デッキのパッケージを飾る《折れ刃のちし郎》のサイドストーリーです。
なお、メインストーリーは完結しています。

 大蛇人(おろちびと)とその神は、もはやかつてと同じではなかった。互いの絆もまたひとつの記憶となり、息が詰まるような夜が深まる中、ふたりは共に悲嘆にくれた。怪磨の根はもはや悶えていなかった。集落は破壊されたが、壊滅には至っていなかった。

「怪磨、改めて正そう」 ちし郎はそう言い、頭を低くした。そして彼は互いの絆であった刃を差し出した。「どうしても必要だというなら、お前から俺の人生を切り離そう」

 結局のところ、自分は自分自身を見ていたのだ――毒された泉に浸る定命の肉体は怪磨の神性と絡み合い、その腐敗と過ちを知ることを余儀なくされた。

 怪磨が身体を傾けると、奇妙な音が発せられた。神は砕けた地面に音をたてて倒れ、たわんで曲がった身体の周囲に塵を巻き上げた。その音を内から発したまま、怪磨は再び震えた。笑い声、ちし郎は唐突にそう気づいた。年老いて疲れた、生気のない笑い声。

「正さなくともよい」 年老いた喉から、怪磨は初めて声を発した。初めて、だが元からあったのだ。湿ってかすれ、不気味なほど定命の声に似たそれは、謝罪だった。「私は私であり続ける。私がなるものになる。だが可能であったとしても、かつての私にはもはやなりたくない」

 古い、詮索するような気配に、ちし郎は再び痛みを覚えた。怪磨にその姿を与え、突き動かした疑問。自分とは異なる何かに手を届かせる方法を、この神はいつも探していた。

 ちし郎はためらいながら、何も持たない掌を怪磨の巨大な鼻面に伸ばした。神はそれが触れるがままにさせた。「ならば、どうすればお前に平穏が与えられる?」

「それは私に与えられて然るべきものなのか?」

「そうではないかもしれない」 ちし郎はそう答えた。彼らは怪磨の怒りがもたらした瓦礫の中に立っていた。それは怪磨の残酷さがもたらした、ほんの一部に過ぎない。それでも。「だが、お前が手に入れてくればいいと思う」

「ならば再び、お前を私に与えよ」 その言葉は他の何よりも滑らかに発せられた。怪磨の望みは、欲するものは明白だった。ちし郎は怪磨の黒い瞳に映る自身を見て、一瞬、彼らはともに輝いた。「お前を再鍛したように私を作り直せ。私の不寝番であれ。私の守りであれ。私の信念と絆であれ」

 ちし郎は思考で返答した。『できない。そうであってはならない』 そして続けた。『何故また私を信頼できる?』

 だがそれこそ、絆が成せるものだった。互いの内に希望を失おうとも、映し出された姿の中に再びそれを見つけ出す。

 ちし郎は今一度、絆の刃を互いの間に低く構えた。すると細い割れ目が刃に走った。破片が一つまた一つと剥がれ落ち、その下から彼らの再生の光が輝き現れた。

引用元
神河:輝ける世界 エピソード17
サイドストーリー:自省と再生の刃
https://mtg-jp.com/reading/ur/NEO/0035775/


同じ統率者デッキに収録されている、《鎮まらぬもの、怪磨》という神との奇妙な絆の物語です(※1)。
ただ同じデッキに収録されるだけでなく、こうした背景物語上の意義もあるのは、面白いでしょう。
その他、デッキリストには《神との協約》《神とともに》など、神との絆を思わせるカードがあります。

なお、本流セットからは、《カエル乗り、達成》も登場しました。
メインストーリーでは出番がなかったキャラクターにも、こうしてサブストーリーで出番があるのは嬉しいところです。

※1
『神河:輝ける世界』統率者デッキのカードリスト(※2)
https://magic.wizards.com/ja/articles/archive/feature/shen-he-hui-kerushi-jie-tong-lu-zhe-detuki-2022-02-07
『神河:輝ける世界』統率者デッキのギャラリー
https://magic.wizards.com/ja/articles/archive/card-image-gallery/kamigawa-neon-dynasty-commander

※2
なお、『神河:輝ける世界』特別版カードイメージギャラリーにはあるが、統率者デッキのカードリストに収録されていないカードが8枚あります。
《花暁明神》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_jNCaB00Wcz.png
《謎夢明神》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_mRLFiSR7CW.png
《酷叛明神》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_n8YE1UjSZC.png
《咆刃明神》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_PnqgjHzsGT.png
《頂力明神》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_QB7B4F0SFV.png
《永久忠義の義丸》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_ZaeS8XBQVz.png
《無情な屍技術師》https://media.wizards.com/2021/neo/jp_5hp9Dr802r.png
《生命起源の御神体》 https://media.wizards.com/2021/neo/jp_8pNo2UvcZr.png
これらは、通常枠バージョンはセット・ブースターパックから、拡張アートバージョンは、コレクター・ブースターパックから、出現するようです。
各種伝説クリーチャーはともかく、《無情な屍技術師》は伝説でもなく、いったいなぜこの様な特別扱いなのか、不思議です。

参考
翻訳記事その他 2022.1.28 『神河:輝ける世界』製品紹介
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035752/

余談
『神河:輝ける世界』統率者デッキは新規カードが21枚あり、
統率者デッキ専用カード15枚 = 2色伝説2枚 + 1色伝説1枚を含む片方の色7枚 + もう片方の色6枚
本流セットにもあるカード6枚 = 浮世絵土地2種1枚ずつ + その他4枚
という構成です。
「準備を整えろ」の伝説3枚《天才操縦士、コトリ》《開闢機関、勝利械》《命を与える者、カツマサ》は全てストーリー記事で登場しましたが、「解き放たれた強化」の伝説3枚のうちストーリー記事で登場したのは《折れ刃のちし郎》《鎮まらぬもの、怪磨》の2枚で、《改悛の大将軍、恒征》は登場しませんでした。
本流セットから《カエル乗り、達成》をストーリーに出す一方で、統率者デッキから出てこないのはなんともチグハグに感じます。

2022/02/11に※2と余談を追記しました

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