神河現代 - セットデザイン・リード
2022年1月29日 Magic: The Gathering コメント (2)
ネオ神河の開発コラムが更新されました。
執筆者はセットデザイン・リードのデイブ・ハンフリー/Dave Humpherysです。
アーティファクトとエンチャント
今まで、どちらかのカードタイプをテーマとした次元はありましたが、両方ともテーマにしたことはなかったので、こうして両方をテーマに組み込める、現代vs伝統というアイデアは気に入っている、とのことです。
言われてみれば、なるほどと納得します。
アーティファクトもエンチャントも、クリーチャーと兼任できるので、結果的に幅広いカードにシナジーを持たせることができるのも利点と言えるでしょう。
改善が、アーティファクトともエンチャントともシナジーを持てるように、単純に二律背反というわけではないのも面白いところです。
改善
改善はほぼ当初から変更なしで完成したメカニズムで、変更されたのは改善されたクリーチャーを並べるようなデザインも作り始めたこと、とのことです。
何かメカニズムを考えたら、それを軸にしたデッキが作れるか、作れるとしたらどんなデッキにしたいか、という視点まである方がいい、と言えるでしょう。
もちろん、リミテッドやカードパワーの点から、その有無だけを参照したり、自己完結したり、というカードも必要でしょうが、それ以外もデザインできるに越したことはありません。
余談ですが、当初は「強化/enhanced」というネーミングだったそうです。
まさに自分が過去に作ったオリカと同じだったので驚いています。
http://forum.astral-guild.net/board/21/1622/83
忍術
一方、改善と相性が悪いのが忍術で、調整版が検討されたそうです。
しかし、忍者は強化することよりも、攻撃を通すことがテーマなので、最終的には忍術は変更なしの再録となりました。
これは中々悩ましい&興味深い話だと思います。
陣営のテーマやメカニズムごとのシナジーは、できるならあった方が面白いのは確かです。
特に、リミテッドにおいて楽しい選択肢を増やすことができるでしょう。
しかし、現実的には、全てにシナジーを作ることはかなり難しい話です。
これだけなら単に妥協にも見えますが、そうではないとも考えられます。
というのも、「強化する改善」「攻撃を通す忍術」と、別軸の戦略があることもまた重要だからです。
シナジーがありすぎると、どのデッキでも強化して殴る、というワンパターンになりかねません。
そう考えると、メカニズム間のシナジーに拘りすぎないことも必要かと思います。
魂力
魂力の利点は、デザインの汎用性の高さ、マナフラッド・マナスクリュー受けのどちらにも使えることである、とのことです。
また、エンチャント、アーティファクト、土地にだけつけるという制限を設けたそうです。
旧神河ではスピリット・クリーチャーに限定し、能力もクリーチャーの常在型・起動型能力と関連付けたものでした。
これをそのままにすると、デザインが窮屈になるので、変更しやすい能力語であったことは幸いでしょう。
カードタイプ制限の理由は定かではありませんが、クリーチャー用のメカニズムはすでに多くあるためではないかと推測します。
伝説
伝説と言えば神河だったのが、今ではドミナリアのテーマというイメージがあるそうで、伝説の扱いを少し変える意図があったそうで、その1つが伝説土地+魂力、とのことです。
統率者戦に使える多色の伝説クリーチャーが旧神河には1枚しかなかったので意図的にそれらを供給した、というのは、まさに今のMTGらしいと言えます。
昔よりも多色カードが気軽に作られるようになった、という点においても、です。
サイクル
神河で人気のあった、ドラゴン、祭殿、群れをそれぞれ新しくカードにした、とのことです。
リメイクの仕方もそれぞれに異なっているのも特徴でしょうか。
新しく登場する招来サイクルは「単色での根本原理」を目指したものだそうです。
根本原理に倣うなら単色マナ7つというコストになるハズですが、《絶望招来》はそうなっていません。
その色らしさを追求した派手な効果の呪文というコンセプトでしょうか。
個人的に気になったのは、ここで明神が出てこないことです。
プレビューでも、でない非公式リークでも、公式ストーリーでも全くないので、人気がないから不登場、ということなのでしょうか。
《絶望招来》のFTをみるに、存在はしているようですが。
英雄譚
クリーチャーに変身するアイデアは好評だが、すぐに攻撃できるのは問題ということで、追放して変身するのが基本(一部は速攻もち)にしたそうです。
また、変身した後のカードには伝説をつけない決定をしたとあるのですが、ここでは理由が明記されていません。
コモンでも英雄譚を登場させたので同名が並びやすくなったから、クリーチャーはあくまで実体のないイメージ(故にエンチャント)だから、ということでしょうか。
換装
装備して攻撃した後、クリーチャーに戻すことが出来る点は、問題なしと判断され、意図的に残されたようです。
仮に防ぐようなテキストを書くとなると不自然ですし、それが強すぎるようなら、スタッツで調整すればいいだけ、ということでしょうか。
侍(と戦士)
忍術が再録された一方で、武士道は再録されませんでした。
シンプルで良いメカニズムではあるものの、相手の出方次第で役に立たなくなるのが問題視されました。
そこで、賛美の亜種である「1体で攻撃するたび〜」というテーマになったそうです。
侍は集団戦よりも一対一の決闘のイメージの方が合うので名案と言えます。
侍と戦士をまとめたのは、孤立的なメカニズムにしないためでしょう。
忍者とならず者も同様かと思います。
ファイレクシアを少々
これまでの神河テーマの中に、ストーリー上の必要性からファイレクシア要素を入れることになるわけですが、それはむしろ楽しい課題だったようです。
それにしても、タミヨウはイニストラードやラヴニカや新ファイレクシアと、他次元でばかりカード化されて、神河らしさが反映されないのが残念です。
いつか元の姿に戻って、「神河でのタミヨウ」がカード化されることを願います。
《カエル乗り、達成》
架空の忍者、自来也がモデルとのことです。
古い民話のキャラクターがモチーフなので、伝統性のエンチャントシナジーがあるのでしょう。
「一緒に飛び跳ねる能力」というのは、カエルらしさ&騎乗する様を表現すると同時に、忍者の「攻撃を通す戦略」にも合致するのが素晴らしいところです。
その他、新しい情報です。
《平地》浮世絵アート版の壁紙が公開
https://magic.wizards.com/en/articles/media/wallpapers
日本語セットブースターの発売遅れ
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/news/kamigawa-neon-dynasty-product-delay-2022-01-28
執筆者はセットデザイン・リードのデイブ・ハンフリー/Dave Humpherysです。
私は良い挑戦を好みます。より挑戦的なデザインのセットをリードしたいのです。セットを制作する難易度を上げている犯人が私だというのはよくあることです。神河に再訪することが決まると、私はそれを正しくやり遂げるのは大変だと思いました。
(中略)
私がこのセットデザインをリードすることが判明すると、すぐに私は「デュエル・マスターズ」のチームと連絡を取りました。私は東京オフィスに手伝ってくれる人は誰かいないかと訪ねました。ほどなく、真木孝一郎が彼の他の仕事の合間に手伝うことができると判明しました。藤井由紀は真木とのデザイン・チームの会議や他の細かい会議での通訳を快く引き受けてくれました。
彼らはそれぞれ、日本のプレイヤーがこのセットに望んでいるもの、そして前回神河に訪れたときに最も魅力的なものと最も魅力的でなかったものについての素晴らしい視点を持っていました。また彼ら東京オフィスの他の人たちから得たカードのデザインや意見の取りまとめにも貢献してくれました。真木は彼が見たい画像や作ってほしいキャラクターや物の元ネタや種類が書かれた文書をたくさん作成しました。これらの文書により我々はこのセットで間違ったことをしていないという強い確信が得られました。彼らはセットデザインでのメカニズムの採用に関して大きな影響を持っていました。
このサポートすべてを受け、そして素晴らしい見た目のコンセプト・アートが届き始め、私はなにか特別なものがここにあると確信し始めました。それではそのメカニズムを見ていきましょう。マーク・ローズウォーターは他の過去のメカニズムを使わなかった理由について深く掘り下げてくれるでしょう。
引用元
翻訳記事その他 2022.1.29 『神河:輝ける世界』デザインに生命をもたらす
https://mtg-jp.com/reading/translated/0035760/
アーティファクトとエンチャント
今まで、どちらかのカードタイプをテーマとした次元はありましたが、両方ともテーマにしたことはなかったので、こうして両方をテーマに組み込める、現代vs伝統というアイデアは気に入っている、とのことです。
言われてみれば、なるほどと納得します。
アーティファクトもエンチャントも、クリーチャーと兼任できるので、結果的に幅広いカードにシナジーを持たせることができるのも利点と言えるでしょう。
改善が、アーティファクトともエンチャントともシナジーを持てるように、単純に二律背反というわけではないのも面白いところです。
改善
改善はほぼ当初から変更なしで完成したメカニズムで、変更されたのは改善されたクリーチャーを並べるようなデザインも作り始めたこと、とのことです。
何かメカニズムを考えたら、それを軸にしたデッキが作れるか、作れるとしたらどんなデッキにしたいか、という視点まである方がいい、と言えるでしょう。
もちろん、リミテッドやカードパワーの点から、その有無だけを参照したり、自己完結したり、というカードも必要でしょうが、それ以外もデザインできるに越したことはありません。
余談ですが、当初は「強化/enhanced」というネーミングだったそうです。
まさに自分が過去に作ったオリカと同じだったので驚いています。
http://forum.astral-guild.net/board/21/1622/83
忍術
一方、改善と相性が悪いのが忍術で、調整版が検討されたそうです。
しかし、忍者は強化することよりも、攻撃を通すことがテーマなので、最終的には忍術は変更なしの再録となりました。
これは中々悩ましい&興味深い話だと思います。
陣営のテーマやメカニズムごとのシナジーは、できるならあった方が面白いのは確かです。
特に、リミテッドにおいて楽しい選択肢を増やすことができるでしょう。
しかし、現実的には、全てにシナジーを作ることはかなり難しい話です。
これだけなら単に妥協にも見えますが、そうではないとも考えられます。
というのも、「強化する改善」「攻撃を通す忍術」と、別軸の戦略があることもまた重要だからです。
シナジーがありすぎると、どのデッキでも強化して殴る、というワンパターンになりかねません。
そう考えると、メカニズム間のシナジーに拘りすぎないことも必要かと思います。
魂力
魂力の利点は、デザインの汎用性の高さ、マナフラッド・マナスクリュー受けのどちらにも使えることである、とのことです。
また、エンチャント、アーティファクト、土地にだけつけるという制限を設けたそうです。
旧神河ではスピリット・クリーチャーに限定し、能力もクリーチャーの常在型・起動型能力と関連付けたものでした。
これをそのままにすると、デザインが窮屈になるので、変更しやすい能力語であったことは幸いでしょう。
カードタイプ制限の理由は定かではありませんが、クリーチャー用のメカニズムはすでに多くあるためではないかと推測します。
伝説
伝説と言えば神河だったのが、今ではドミナリアのテーマというイメージがあるそうで、伝説の扱いを少し変える意図があったそうで、その1つが伝説土地+魂力、とのことです。
統率者戦に使える多色の伝説クリーチャーが旧神河には1枚しかなかったので意図的にそれらを供給した、というのは、まさに今のMTGらしいと言えます。
昔よりも多色カードが気軽に作られるようになった、という点においても、です。
サイクル
神河で人気のあった、ドラゴン、祭殿、群れをそれぞれ新しくカードにした、とのことです。
リメイクの仕方もそれぞれに異なっているのも特徴でしょうか。
新しく登場する招来サイクルは「単色での根本原理」を目指したものだそうです。
根本原理に倣うなら単色マナ7つというコストになるハズですが、《絶望招来》はそうなっていません。
その色らしさを追求した派手な効果の呪文というコンセプトでしょうか。
個人的に気になったのは、ここで明神が出てこないことです。
プレビューでも、でない非公式リークでも、公式ストーリーでも全くないので、人気がないから不登場、ということなのでしょうか。
《絶望招来》のFTをみるに、存在はしているようですが。
英雄譚
クリーチャーに変身するアイデアは好評だが、すぐに攻撃できるのは問題ということで、追放して変身するのが基本(一部は速攻もち)にしたそうです。
また、変身した後のカードには伝説をつけない決定をしたとあるのですが、ここでは理由が明記されていません。
コモンでも英雄譚を登場させたので同名が並びやすくなったから、クリーチャーはあくまで実体のないイメージ(故にエンチャント)だから、ということでしょうか。
換装
装備して攻撃した後、クリーチャーに戻すことが出来る点は、問題なしと判断され、意図的に残されたようです。
仮に防ぐようなテキストを書くとなると不自然ですし、それが強すぎるようなら、スタッツで調整すればいいだけ、ということでしょうか。
侍(と戦士)
忍術が再録された一方で、武士道は再録されませんでした。
シンプルで良いメカニズムではあるものの、相手の出方次第で役に立たなくなるのが問題視されました。
そこで、賛美の亜種である「1体で攻撃するたび〜」というテーマになったそうです。
侍は集団戦よりも一対一の決闘のイメージの方が合うので名案と言えます。
侍と戦士をまとめたのは、孤立的なメカニズムにしないためでしょう。
忍者とならず者も同様かと思います。
ファイレクシアを少々
これまでの神河テーマの中に、ストーリー上の必要性からファイレクシア要素を入れることになるわけですが、それはむしろ楽しい課題だったようです。
それにしても、タミヨウはイニストラードやラヴニカや新ファイレクシアと、他次元でばかりカード化されて、神河らしさが反映されないのが残念です。
いつか元の姿に戻って、「神河でのタミヨウ」がカード化されることを願います。
《カエル乗り、達成》
架空の忍者、自来也がモデルとのことです。
古い民話のキャラクターがモチーフなので、伝統性のエンチャントシナジーがあるのでしょう。
「一緒に飛び跳ねる能力」というのは、カエルらしさ&騎乗する様を表現すると同時に、忍者の「攻撃を通す戦略」にも合致するのが素晴らしいところです。
その他、新しい情報です。
《平地》浮世絵アート版の壁紙が公開
https://magic.wizards.com/en/articles/media/wallpapers
日本語セットブースターの発売遅れ
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/news/kamigawa-neon-dynasty-product-delay-2022-01-28
コメント
日本人に協力を求めたりするものなのですね!
その結果の一つとして、ネオ神河版ジライヤ(緑も入れられるニンジャ統率者!)が出来た。
素晴らしいです!
コロナで日本語版の発売日が延期になりそうなのは、残念ですが、今後もネオ神河の記事が楽しみです!