神河当時 - 《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker》など3体の2/2
神河当時 - 《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker》など3体の2/2
神河当時 - 《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker》など3体の2/2
 それでは神河の世界に戻るとしよう。要するに、伝説のクリーチャーの話をしようって事だ。以前のコラムで、神河物語の3人の伝説のクリーチャーの調整の話をした。なので、今回は神河謀叛で同じようにメジャーどころを3体取り上げようと思う。奇しくも全部2/2のクリーチャーだ。
《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker》
 ああ、《冬の宝珠/Winter Orb》よ。マーク・ローズウォーター(Mark Rosewater)御大の「ゲームの面白さというもの」を語る上で、これ以上ふさわしいカードがあるだろうか?

 あるカードによって立て続けにゲームに負けると、それはほとんどの場合面白くないカードということになってしまう。例えば、《曇り鏡のメロク/Meloku the Clouded Mirror》に最初に負けた場合、君の台詞は「へぇ、そいつはマジ強いねぇ。いいなぁ」あたりだろう。しかしそいつに11連敗もする頃になると、おそらく君の台詞の中には「(カードをたたみながら)そんなクソカード使うなよ。つまらない」なんて行が入るだろう。プレイヤーはゲームの多様性を楽しんでいるので、やるゲームやるゲームで同じカードにこてんぱんにされるのはあまりいただけない。

 全盛期の《冬の宝珠/Winter Orb》も、あっというまにこの「クソカード」の地位を確立した。世の中にはあっという間にゲームを勝ちに持っていくカード、例えば《粗野な覚醒/Rude Awakening》や《ダークスティールの巨像/Darksteel Colossus》なんかがある。しかし、《冬の宝珠/Winter Orb》はそういうカードではない。《冬の宝珠/Winter Orb》が出るということは、すなわち「プレイは続けてもいいけど、あと1時間ぐらいはかかるよ。ゆっくり腰を落ち着けて、どうやって僕が君を倒すかを見てなよ」と言われる様なものだ。

 こいつは軽く、無色で、悪用が簡単だ(タップすることで効果が消えるので、コントローラーは《氷の干渉器/Icy Manipulator》や《秘宝の障壁/Relic Barrier》や《対立/Opposition》を使って自分のアンタップ・ステップを確保しつつ、相手のものだけを却下することができる)。神河謀叛のデザイナーはこの《冬の宝珠/Winter Orb》の新たな方法論を、これらの隠れた強さ――無色だったり悪用が簡単だったり軽かったり――が無いように考えていた。当初の“宝珠くん”が調整チームに回されたとき、それは《水位の上昇/Rising Waters》(《冬の宝珠/Winter Orb》の後の形)バージョンの、で1/3の伝説のクリーチャーだった。

 世の中には、《冬の宝珠/Winter Orb》が嫌いなプレイヤーがいる一方で、好きだったプレイヤーもいる――大抵はデッキに入れていたプレイヤーだ。プレイヤーは自分が使いまわすことがかっこいいと思われる強力な効果が好きで、《冬の宝珠/Winter Orb》はその手のカードの代表なのだ。開発部も二つに割れているようだった。半分は《冬の宝珠/Winter Orb》に不満を抱いている犠牲者たちで、もう半分は2枚のアンタップ状態の土地で相手を却下し続けていた回顧主義者だ。

 RB 1/21:強力で興味深い構築カードだ。ここ数年はマナコントロールをFFLで試したことがないし、ミラディンのアーティファクトのマナと組み合わせると面白いだろう。マナを攻撃することは危険な行為になりかねないが、ここ数年は軽いマナコントロールが構築に無かったことを考えると、あっても問題はないだろう。

 調整メンバーのデヴィン・ロー(Devin Low)は、メンバーの中でも誰よりも多くのマスクスブロック構築を戦ってきたプレイヤーで、そのフォーマットにおける《水位の上昇/Rising Waters》のうっとうしさをすぐさま指摘してきた。それに対する後のマット・プレイス(Matt Place)のコメントは「確かに《冬の宝珠/Winter Orb》の懐かしさもあるけど、《水位の上昇/Rising Waters》のおかげでフォーマットの多様性がマジックの歴史上で最も少なくなってしまった事態も覚えている」というものだった。

 調整のリーダーのヘンリー・スターン(Henry Stern)と残りの調整メンバーは、このカードに対する心配には同意しながらも、とりあえずデザインチームのカードのままで進めることにした。しかし、変更が必要なのはすぐに明白になった。タフネスが3あることは現在のスタンダードの軽い除去のほとんど(《ショック/Shock》、《マグマの噴流/Magma Jet》、《紅蓮地獄/Pyroclasm》)やブロックで最も一般的な大量除去(《忌まわしい笑い/Hideous Laughter》)に対して抵抗力がある。これに《永岩城/Eiganjo Castle》や《輝く群れ/Shining Shoal》あたりの防御を加えると、“宝珠くん”は元々の《冬の宝珠/Winter Orb》よりも除去されにくくなってしまっている。それに加えて、こいつは《かまどの神/Hearth Kami》や《永遠の証人/Eternal Witness》をブロックした上で生き残ってしまうのだ。

 そこで、ヘンリーのチームはこのクリーチャーを0/2にして、より除去されやすいものに変えた。ただし、私の意見からすれば、これはこのクリーチャーの伝説としてのステータスを著しく損ねてしまう。彼の能力の効率はすでに著しく落とされているというのに、この期に及んでパワーが0? いったいどんな伝説なんだろうか? また、美的観点を別にしても、こいつは3マナでは相変わらず暴力的だった。長いこと作ってきたカードの中でも「もっとも面白くないカードの一つ」と称したのはポール・バークレー(Paul Barclay)だ。

 しかし、ランディ・ビューラー(Randy Bueler)一派の言うことも正しかった。それがあることで興味深いデッキがデザインされ、それがあることでメタゲーム上のサイドボードの選択やプレイングの決断などが面白いものになってきた。ヘンリーはそれの落としどころを探ることになった。

 《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker》は最終的にの2/2となり、すべての問題が解決した。伝説のクリーチャーとして問題の無いステータスを供え、構築でも居場所がある。なかなかのインパクトを与えるが、解決できないほどではない。面白いが、ひどいものではない。素晴らしいじゃないか! 近づいてきたブロック構築のプロツアーで、彼の埃っぽい存在が散見されることだろう。

引用元
第2セットの神の話 3枚の強力な神河謀叛の2/2
http://web.archive.org/web/20100423145734/http://mtg.takaratomy.co.jp/others/column/product/20050430/index.html
原文
MIDDLE-SET MYTHOS Posted in Latest Developments on April 22, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/latest-developments/middle-set-mythos-2005-04-22


『神河謀叛』の2/2スピリットクリーチャー3体についての記事です。
特に、そのサイズにパワーバランス上の意味が大きかったのは《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker》のようです。いわゆるロック効果のため、《冬の宝珠/Winter Orb》や《水位の上昇/Rising Waters》のような置物だと除去しにくく、使われて不満を覚えやすいことが問題でした。そこで、除去しやすくするために、当時の主流なスペルで対処しやすいタフネス2にされました。かといって、パワーを0にまでしてしまうのは流石に弱すぎるというか伝説のクリーチャーとして相応しくない、とのことでパワー2とされました(※1)。

その他、《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅/Kira, Great Glass-Spinner》や《死蔵の世話人、死零/Shirei, Shizo’s Caretaker》についても同様に、パワーバランスの調整過程が解説されています。

この記事で取り上げた3枚ともが2/2なのは偶然とのことですが、案外そうとばかりも言えないかもしれません。変異クリーチャーのサイズがあれこれ議論された結果、2/2になったように、MTGにおいて、強すぎず弱すぎず程よいサイズが2/2である可能性があるからです。伝説にふさわしい強力な能力を持たせつつも、能力だけがメインでサイズがおまけにならない有意義なパワーであり、対処しやすいタフネスである、と考えられます。


※1
もっとも、《巻物の君、あざみ/Azami, Lady of Scrolls》はさらに重い5マナで0/2というスペックなのですが。これは起動型能力が強力かつ戦闘向けでないキャラクターだからこそでしょう。


補足
記事として取り上げることはありませんが、一応神河のことが触れられているものについて、付記しておきます。

ゲームの楽しさを解説する記事で、例として神河のカードが何枚か取り上げられます。
FUN, FUN, FUN Posted in Making Magic on April 18, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/fun-fun-fun-2005-04-18

構築済みデッキアップデート記事
DARK DEVOTION: OF HUNGER AND THIRST Posted in Building on a Budget on April 18, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/building-budget/dark-devotion-hunger-and-thirst-2005-04-18
DARK DEVOTION: CRITTERS AND CRITTER REMOVAL Posted in Building on a Budget on April 25, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/building-budget/dark-devotion-critters-and-critter-removal-2005-04-25
DARK DEVOTION: A DEMONIC EPIC Posted in Building on a Budget on May 2, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/building-budget/dark-devotion-demonic-epic-2005-05-02

神河ブロックのドラフトについてのデータ
DECK DRAFTING DEBUNKED Posted in Limited Information on April 19, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/limited-information/deck-drafting-debunked-2005-04-19

神河救済のプロダクトショット
SAVIORS OF KAMIGAWA PRODUCT SHOTS Posted in Arcana on April 20, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/arcana/saviors-kamigawa-product-shots-2005-04-20

神河ブロック構築のデッキリスト
FIVE MORE AVATARS Posted in Feature on April 21, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/five-more-avatars-2005-04-21

恒例のQ&A記事
DRAKES AND DRAGONS AND DRAFTS Posted in Feature on April 23, 2005
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/feature/drakes-and-dragons-and-drafts-2005-04-23


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