神河当時 - 源獣サイクルの調整
2021年2月6日 Magic: The Gathering皆さんは僕の手から逃れたと思ってたかもしれないですけど、そうはいかないんですね。アーロンはお休みを取っているので、コラムを書くという重責が僕のところに回ってきたんです。うまいこといっていたら、僕はお手軽デッキ のコラムで、オンスロートの《謎めいた門/Cryptic Gateway》と神河物語の5体のドラゴンを組み合わせた「竜の門」デッキを紹介してたところなんですけどね。
しかし今回は、無駄に長い情報の日じゃなかったみたいです。
皆さんがここにきている理由もわかってますし、ここでとっとと物を見せないと、すぐにスクロールして下に行っちゃうってのもわかってます。なので、すぐいってしまいましょう。
《香杉の源獣/Genju of the Cedars》
いいですねえ。
「源獣」は神河謀叛に登場する6枚のカードのサイクルで、土地の精霊が生命を得て恐ろしい怪物になったことを表しています。この精霊が1体戦いに敗れても、それは同じタイプの新たな土地へと移って生命を得るのです。カードを見てもらえばわかると思いますが、こいつは根性無しの樹の精なんかじゃありません。こいつは森全体が立ち上がって、目の前にあるものすべてをなぎ払っているのです。
源獣の歴史
このカードは当初、マイク・エリオットによる以下のようなカードとして生を得ました。森の精
2G
エンチャント(土地)
GG:ターン終了時まで、エンチャントされている土地はトランプルを持つ4/4のスピリットとなる。エンチャントされている土地が場を離れた場合、[カード名]という名前のカードをあなたの墓地から手札に戻す。
その二ヵ月後、チームのもうひとりのメンバーのランディ・ビューラー(彼のことは聞いたことありますよね)が、このカードを5/5のトランプルに変更しました。これ以上の変更は入らなず、このカードはそのまま調整チームに回ってきました。
チームのメンバーはヘンリー・スターン、デヴィン・ロウ、ランディ、私で、後にランディが定例会議に参加できないとなって以降、マット・プレイスが入ってきました。そうなんです。神河謀叛は私が公式に参加した初めてのマジックのチームで、私の力を私が長いこと好きだったゲームを形作ることの機会を得たのです。
我々はまずは伝統に従ってファイルのカードを1枚ずつやっつけていったのですが、そこで初めて源獣が出たときに、我々は全部の源獣をホワイトボードに書き、サイクル全体が見えるようにしました。以下はその一覧です。平地の精
W
エンチャント(土地)
W:ターン終了時まで、エンチャントされている土地は0/4のスピリットとなる。エンチャントされている土地が場を離れた場合、[カード名]という名前のカードをあなたの墓地から手札に戻す。
島の精
1U
エンチャント(土地)
1U:ターン終了時まで、エンチャントされている土地は飛行を持つ2/2のスピリットとなる。エンチャントされている土地が場を離れた場合、[カード名]という名前のカードをあなたの墓地から手札に戻す。
沼の精
1B
エンチャント(土地)
2B:ターン終了時まで、エンチャントされている土地は畏怖を持つ3/3のスピリットとなる。エンチャントされている土地が場を離れた場合、[カード名]という名前のカードをあなたの墓地から手札に戻す。
山の精
2R
エンチャント(土地)
1R:ターン終了時まで、エンチャントされている土地は4/2のスピリットとなる。エンチャントされている土地が場を離れた場合、[カード名]という名前のカードをあなたの墓地から手札に戻す。
私たちがすぐに気がついたのは、例えば皆さんが森に[沼の精]をくっつけて街までお出かけすることが可能だってことが気に入らないという点でした。これはイメージ的に間違っている,気がしたしたので、我々はそれぞれを特定の土地にしかエンチャントできないことにしたのです。
次に我々が同意したのは、マナ・コストは白のやつがいいってことでした。マナが1個だけなら源獣は簡単に打ち消し呪文をかいくぐることができますし、起動にマナがかかることで、初期のコストが軽くても強力な数値を与えることができるようになるんです(白のやつの数値は強いとはまったく言えないですが、それについてはまた後ほど)。さらに我々は、特定の土地にしかエンチャントできない事実がすでに色制限となっていることから、起動コストを無色マナ2個に統一することにしました。
その後、我々は個別のカードをまとめ、理路整然とした数値と能力の組み合わせにすることでサイクルを興味深いものにし、それぞれの土地が持つイメージをそのまま持つようにしたのです。《香杉の源獣/Genju of the Cedars》に関して言えばトランプルは適切に思えましたが、最終的に緑のものには能力がいらないということに決めたのです。その“能力”は特段に巨大であることであり、我々はトランプルを除いてクリーチャーの数値を5/5にしたのです。
それ以外の変更として、私たちは誘発条件を土地が墓地に行ったときに変えました。こうすることでテンプレートはより明確になり、プレイヤーは手札戻しなどでこれに対抗する新たな手段を得るのです。ということで、以下のようなカードが出来上がりました。森の精
G
エンチャント(森)
{o2}:ターン終了時まで、エンチャントされている森は緑の5/5のスピリット・クリーチャーになる。それは土地でもある。エンチャントされている森が墓地に置かれたとき、[カード名]をあなたの墓地からあなたの手札に戻す。
まあ、見たとおり、これは当初のものにかなり近いですね。最後の変更は、以下のマルチバースのコメントを見ていただきましょう
(注:私がここで働く前までは、私がここのコラムで好きだったのはマルチバースからの引用でした。まあそんな人は私だけだったのでしょう。でも、みんなが私みたいだったら、できるだけこの新たな優位を悪用していくでしょうね。)
AF 3/12: こいつは4/4が正しいと思うな。5/5だとしょっちゅう「ゲーム終了」って気分になるよ。
ps 3/12: 確かにこのカードはばかげている。4/4がいい線だという点は同意。
HS 3/15: 4/4に下げた。
このカードは攻撃型の緑デッキにおいて強すぎることがわかりました。マナ加速が無い状態でも、これにより速攻の5/5クリーチャーを4ターン目に出すことができますし、そういったデッキが源獣を出し続けることはそんなに難しいことではありません。なんとかして相打ちに持ち込んでも次のターンには出てきてしまいますし、すぐに捨てブロックも尽きて死に向かっていくことになるでしょう。私たちは数値を4/4に下げることにしました。それでもこのカードは非常に強かったですが、まだ何とかなりそうな気がしたのです。
そんなわけで、《香杉の源獣》が誕生することとなりました。
さて、白の話もする約束でしたよね。
HS 2/9: すべてのスピリットに関してコストと能力を修整。統一と調整を行おう。
MP 2/24: ほぉ!
BD 2/26: もう、そう? どうしよう?
へへっ。ご覧の通り、私たちは時々馬鹿っぽいことをしますけど、マット・プレイスが最初にこのカードを見たときのコメント(彼はこれまでチームに入っていませんでした)の台詞は、まあ感想の率直なところでしょう。このカードはその後の調整の間も代わりませんでした。なので、皆さんのお手元に届くのは、0/4よりはもうちょっといいカードだと思いますよ!
引用元
材木襲来 更新日 Latest Developments on 2005年 1月 14日
https://magic.wizards.com/ja/articles/archive/latest-developments/%E6%9D%90%E6%9C%A8%E8%A5%B2%E6%9D%A5-2005-01-14
《香杉の源獣/Genju of the Cedars》のプレビュー記事です。もっとも、内容は源獣サイクル全般ですが。
今回は特に、開発においてどのような調整をたどったのか、という話がメインです。最初の時点で、コンセプトは完成されており、あとはパワーやフレイバー面の調整が主だったように見えます。その内容も極めて妥当かつ自然なものです。実際、構築でもそれなりに採用実績があることからもそれが伺えます。
なお、ここでは言及されていませんが、元々は《世界の源獣/Genju of the Realm》1枚だったのが、その人気からサイクルになった、という経緯があり、その点は以前の日記(※1)で取り上げました。
※1
神河当時 - CARD OF THE DAY 《世界の源獣/Genju of the Realm》
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/202101042228293074/
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