神河当時 - 反転のメリット
昨日の記事の続きです。

私は《鼠の短牙》が本当に気に入っています。トーナメントで戦えることが証明されているカードとの相似性とか。そのネズミっぽさや仲間の害獣とのシナジーとか。それが反転して伝説のネズミ・シャーマンとなり、歴代最強ネズミ2体が合体した姿として《ボール・ライトニング/Ball Lightning》よろしく噛み付く様とか。

しかし、これらは私が《鼠の短牙》を本当に気に入っている理由ではありません。

これまで数え切れないほどの哀れな魔法使いがエイドリアンのカードをひっくり返して、彼から見て正しい方向に直すのを見てきました……しかしエイドリアンは――極めて当たり前ですが――カードを再びひっくり返し、こっちのカードは自分が好きなように並べられるんだ、お気遣いどうも、とでも言わんばかりなのです。彼はカードのタップ状態ははっきりと区別しますし、ライブラリーとか墓地とかその他諸々はとにかく普通なのです。それは相手に対しての礼儀であり、相手に自分がどんなカードを使っているかを理解してもらうための行為なのです。そうですとも。

ぐしゃぐしゃの髪や長い顔と、それに比較すれば害の無いこの技術は、長い間をかけて蓄積されてきたものです。対戦相手は、《鼠の短牙》が自分に対して《破裂の王笏/Disrupting Scepter》よろしく頭をボコボコやってくる間、その動きにターンに渡って混乱し、やる気がなくなってくるでしょう。こいつは本当に悲しいことです。エイドリアンが一人でゲームをやるなり、翌週の「カード戦術」のコーナーのあらすじを考えるなり間に想定する典型的な相手は、ごちゃごちゃの状況でむなしくもがいている望みの無い相手なのでしょう。

特に悲しむべき事態は、マジックの偉大なる戦術コラムニストであるエリック・テイラーがエイドリアンとひどい戦いをしたときに起こりました。エリックは自分でもカードを逆さまにして、この本気プレイヤー同士の戦いで巻き返そうとしたのです……しかし、それは役に立ちませんでした。かわいそうなエリックは自分のカードにも混乱してしまい、ついにはゲーム半ばで、少なくともボードの半分だけ我慢すればいいように、カードを直さざるを得なくなったのです。ついでに言うと、彼は非常に頭がよく、かの比類なきパット・チャピンの師匠で、ついでにグランプリのチャンピオンなんですよ!

しかし、今や《鼠の短牙》のようなカードが出ることで、堕落せしマジックマニアの犠牲者となった多くの無力なプレイヤーが、ついにその正当性を主張できるようになるんじゃないかと思います。エイドリアンもようやく他のプレイヤーと同様にプレイすることを強いられるでしょう。混乱の種ですからね。《鼠の短牙》は相手の手札を全部捨てさせますが、その時には正しい方向を向かなくちゃいけません。カードをすべて正しい向きに並べること――そうしなければ本当はいけないはずなのですがーーで、この痛めつけられてきた魂が、ついには今まで我慢していた紙っぺらで行うべきことを行えるようになるのです。もちろん、その時には手札も無ければ選択肢もほとんど残ってないでしょうが、それはエイドリアンの問題でもなければ、《鼠の短牙》にもまったく関係のないことです。

引用元
憎まれ者の短牙 更新日 Feature on 2004年 9月 8日
https://magic.wizards.com/ja/articles/archive/feature/%E6%86%8E%E3%81%BE%E3%82%8C%E8%80%85%E3%81%AE%E7%9F%AD%E7%89%99-2004-09-08


反転カードと言えば、タップ状態では反転か否かが混乱の元ということが理由で不評でした。

この記事ではむしろ、「だからこそ、みんなが正しい向きでプレイするようになる」というメリットとして、最大のお気に入りポイントと言われています。

正直なところ、こういう考えはありませんでした。まさに逆転の発想と言えるでしょうか。

結局は、前述のような不評に終わったことを考えると、向きを正す強制力とはならなかったようですが。

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