「神河当時」と題した日記では、『神河物語』発売当時のコラムを取り上げていきます。古いコラムがすべてが残っているのかは分かりませんが、出来る限りは取り上げていきたいと思います。
それまでのセットがメカニズムをテーマにして作られていたため、現実の世界を元にして作ってはどうか、という話がありました。これがトップダウンデザインです。
神河ブロックはマジック最初のトップダウン・デザイン・ブロックであったのですが、その結果は大失敗であったことは以前の日記(※1)にまとめました。
「最初の」とはありますが、記事中でも取り上げられた『アラビアンナイト』はどうなのでしょうか。その名のとおり『千夜一夜物語』の世界を元にしたセットです。ただ、ブロックでなく単体のエキスパンションです。そのため、「ブロック制以降で最初は」神河、ということでしょう。
ただ、こちらもトップダウン・デザインとしては神河とは違った問題点がありました。上記の記事で「ただ、現実の世界を丸まんまコピーするんじゃなく、」とあるように、すでにあるもののコピーである点です。
その点は、ラバイア値の記事でも語られています。
ラバイア値が10であるのは、単純に人気やメカニズムの問題以上に、その世界がただのコピーでしかない点であるようです。舞台となる世界の作り方自体が変わったので仕方がありませんが。
神河はその点を踏まえて、「我々は自分自身で作った世界を、我々が飛び込むための現実の世界とする」ことになりました。
神河も反省点は多いですが、その神河もまた過去の反省点から作られた点はある、ということです。
※1
神河教訓 - トップダウン・デザインの手法
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/201912061829517801/
余談
今回から、引用の書き方を少し変えました。引用元の記事名やリンクも、囲みの中に入れて、末尾に置いてあります。
イメージの一年
一年半ほど前のある日、マジックのヘッド・デザイナーのビル・ローズ(ああ、確かに今はこの肩書きは私のものだけど、我々はこの仕事を一年以上前からやってて、最初に神河物語が作られたとき、ビルはまだマジックのデザインの責任者だったんだ)は、この問題と向かい合っていた。どうすれば、これまでのマジックに無かったやり方で、この神河物語(当時はアースと呼ばれていたーーその後がウィンドとファイヤーだ)を大衆にウケさせることができるだろうか?これが、ビルが新しい種類の“攻撃”を考え始めた時だ。
インベイジョンのブロックから始まって、マジックのデザインチームはセットを作り上げるための道具としてテーマを使い始めている。テーマは長年にわたって有効だったので、今回も同じアプローチで行こうとしたのさ。ゲームのメカニズム的な側面を取り上げ、その選んだ側面に関する事項を作り上げる方法だね。インベイジョンは多色がメインで、プレイヤーにできるだけ多くの色を使ってもらおうとした。見たとおり、色が中心事項だね。次はオデッセイブロックで、こいつは墓地にご熱心だった。このブロックでは、プレイヤーはそれぞれの墓地の中身に非常に気をつけなくちゃいけなかった。そんなわけで、もちろん、墓地が中心事項だ。その次がオンスロートブロックの部族関連で、次のミラディンのアーティファクト関連へと続く。
で、ビルは考えた。テーマが少し真面目すぎるようになってきたんじゃないだろうか? 「こうしやがれ」って声高に叫ぶテーマじゃないものを作ることはできないだろうか? そして、ビルは思いついた。どうしてテーマがメカニズムに直結してなくちゃいけないんだろうか? 一番最初のエキスパンションであるアラビアン・ナイトのページをめくれば、これは現実世界のイメージを元に作ったものじゃないか? ただ、現実の世界を丸まんまコピーするんじゃなく、我々は自分自身で作った世界を、我々が飛び込むための現実の世界とすることになるんだ。問題は、どの世界にすべきかだ。そして、どうすれば自分たち独自のものとなるのだろうか?
引用元
さらに一味のイメージを 更新日 Making Magic on 2004年 8月 30日
https://magic.wizards.com/ja/articles/archive/making-magic/%E3%81%95%E3%82%89%E3%81%AB%E4%B8%80%E5%91%B3%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%92-2004-08-30
それまでのセットがメカニズムをテーマにして作られていたため、現実の世界を元にして作ってはどうか、という話がありました。これがトップダウンデザインです。
神河ブロックはマジック最初のトップダウン・デザイン・ブロックであったのですが、その結果は大失敗であったことは以前の日記(※1)にまとめました。
「最初の」とはありますが、記事中でも取り上げられた『アラビアンナイト』はどうなのでしょうか。その名のとおり『千夜一夜物語』の世界を元にしたセットです。ただ、ブロックでなく単体のエキスパンションです。そのため、「ブロック制以降で最初は」神河、ということでしょう。
ただ、こちらもトップダウン・デザインとしては神河とは違った問題点がありました。上記の記事で「ただ、現実の世界を丸まんまコピーするんじゃなく、」とあるように、すでにあるもののコピーである点です。
その点は、ラバイア値の記事でも語られています。
ラバイア
(中略)
メカニズム的特徴:貧弱
『アラビアン・ナイト』は最初のトップダウン・デザインであった。(すでに常磐木だったものを除き)名前のあるメカニズムすら存在していなかった。ほとんどはカード1枚単位でデザインされており、メカニズム的に基盤になるものはそれほど存在しなかった。
クリエイティブ的特徴:貧弱
そもそも、ラバイアは元ネタに触発されたマジックの世界ですらない。ラバイアは、既存の(ただし著作権の存在しない)知的財産のコピーであるマジックの世界である。リチャードがこのセットをデザインしたとき、彼は「千夜一夜物語」に生命を吹き込んだのだ。今日では、我々は我々のひねりを加えて世界を作る。ラバイアにはそういうひねりを加えていない。実際、リチャードは新しい世界を作ろうとすらしていなかった。それはすべて、後追いで作られた。「ラバイア」という名前は、このセットが「アラビアン・ナイト」と呼ばれることを説明するための取り澄ましたやり方に過ぎなかったのだ。
(中略)
ラバイア値:10
この世界が10の理由、そしてこの指標がラバイア値という名前になっている理由は、私がこの世界には二度と戻らないだろうと強く思っているからである。現在の世界の作り方とは違っていたのだ。現在は、いつか同じような元ネタに触発された新しい世界を作るかもしれないと思っているが、その場合にはひねりを加えることになり、ラバイアではなくなることだろう。
引用元
Making Magic -マジック開発秘話- 2018.11.27 ラバイア値 その2
https://mtg-jp.com/reading/mm/0031406/
ラバイア値が10であるのは、単純に人気やメカニズムの問題以上に、その世界がただのコピーでしかない点であるようです。舞台となる世界の作り方自体が変わったので仕方がありませんが。
神河はその点を踏まえて、「我々は自分自身で作った世界を、我々が飛び込むための現実の世界とする」ことになりました。
神河も反省点は多いですが、その神河もまた過去の反省点から作られた点はある、ということです。
※1
神河教訓 - トップダウン・デザインの手法
https://researchofkamigawa.diarynote.jp/201912061829517801/
余談
今回から、引用の書き方を少し変えました。引用元の記事名やリンクも、囲みの中に入れて、末尾に置いてあります。
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