神河資料 - ニコル・ボーラスと夜陰明神
神河資料 - ニコル・ボーラスと夜陰明神
昨日と同じく、ニコル・ボーラスの企画記事の第1回から、『時のらせん』ブロック時の話です。

企画記事 2017.8.3 多元宇宙ヒストリア 第1回:ニコル・ボーラス(上)
https://mtg-jp.com/reading/special/0019366/
3.『時のらせん』と大修復の物語
それから数百年の間、ボーラスは多元宇宙の歴史から姿を消します。ですが彼は完全に滅んだわけではありませんでした。残留思念のような形で残っていたその精神がある時、現実世界へ帰還する手がかりがやって来たのを捉えます。

当時のドミナリアは疲弊しきっていました。ウルザとミシュラの兄弟戦争とそれを終わらせた大破壊、プレインズウォーカー・フレイアリーズの世界呪文、トレイリアでの時間遡行実験の失敗、ファイレクシアの侵略、邪神カローナの顕現......太古の昔から繰り返された大災害によって、ドミナリアの次元構造そのものに「時の裂け目」が形成され、時間と空間を侵食するとともにマナが失われていました。そしてその影響はドミナリア内だけに留まらず、まるでひび割れたガラスのように多元宇宙そのものが崩壊の危機に瀕していたのです。

それを察し、時の裂け目を「塞ぐ」手段を探す旅に出たのがプレインズウォーカー・テフェリーとその古くからの友人ジョイラでした。彼と仲間達はその道中、マダラの海岸へと流れ付きます。それを察したボーラスの残留思念はテフェリーではなく、同行者の二人に注目しました。

ケルドの血を引くハーフエルフのラーダと、アーボーグで生まれ育った人間の工匠ヴェンセール。この二人に対しては複数のプレインズウォーカーが未知の力を、何か引っかかるものを感じていました。それは、言うなれば新種のプレインズウォーカーとしての力の萌芽でした。ボーラスはそれをある種の錨のように用いて、肉体をもって現実世界へと帰還することに成功しました。

しばしのやり取りの後、テフェリー達は世界の「修復」を続けるべく再び旅立ちました。ボーラスは一旦ドミナリアを離れ、遥か神河次元へと旧敵を追います。あのテツオ・ウメザワの先祖をこの世界へともたらした存在、かの次元にて夜と闇を統べる高位の精霊。やがて彼女は命からがらドミナリアまで追われ、そしてボーラスと同じく帰還していたもう一人の、太古からの邪悪なプレインズウォーカーへと取引とともに助けを求めました......「夜歩みし者」レシュラックに。

その間に、テフェリー達は時の裂け目を塞ぐ方法を見つけていました。それはプレインズウォーカーの灯を、あるいは命までをもその裂け目に捧げること。テフェリーは仲間に後を託し、最初にそれを実行しました。ですが彼は生きながらえ、とはいえプレインズウォーカーとしての能力を全て失い、また多くの魔力をも失ってただの人間となりました。その行動を、勇気を、覚悟を目の当たりにして他のプレインズウォーカーも彼に続きます。スカイシュラウドの守護女神フレイアリーズ、アーボーグの守護神ウィンドグレイス。守るべきものを守る手段は「時の裂け目を塞ぐ」以外にない、それを知って彼らもまた半ば諦めとともに覚悟を決め、時の裂け目へと身を捧げて長い生涯を閉じたのでした。

ですが失われるものだけでなく、新たに生まれるものもありました。テフェリーが見出した青年ヴェンセール。彼は旅の間に「瞬間移動」の力に目覚めます。彼のそれはプレインズウォーカーの次元渡りと原理的には同じもの、けれど不老不死の身体も無限の魔力も持たず、ただ空間を超えて移動する力......それは世界を傷つけることのない「新世代」と言うべきプレインズウォーカーの誕生でした。

やがて再びマダラの海岸にプレインズウォーカー達が集い、レシュラックがボーラスへと決闘を申し込みました。彼らは直ちにドミナリアを飛び出し、多元宇宙の様々な次元を飛び回りながら壮絶な戦いを繰り広げます。レシュラックの容赦ない攻撃にボーラスは深い傷を負い、逃走し......ですがそれは見せかけでした。真の力をもって彼はレシュラックを打ち負かし、時の裂け目の一つへと放り込んで始末しました。

そしてボーラスは再びテフェリー達と対面します。世界の修復が成功するにせよ失敗するにせよ、変わらずにいられるものは何もない......それはボーラスもわかっていました。新たな世代を担うであろうプレインズウォーカー達に別れの言葉を告げ、彼は再びドミナリアを離れたのでした。今回は、二度と戻らないであろうことを薄々感じながら。

ボーラスは逃走しました。「大修復」の波が届かないであろう、多元宇宙のどこか彼方へ......ですが無常にも、それは全知全能かつ最強最悪のニコル・ボーラスをも捕えました。世界構造の変化はプレインズウォーカーの不老不死を奪い、それだけでなく永劫の時をかけて積み重ねてきた力と知識が僅か数十年の間にすり減り、零れ落ちていくのを感じました。初めて、年齢による身体の衰えを感じました。

そして、もはや神とは呼べない存在となったボーラスは、新たな行動を開始します......。


「あのテツオ・ウメザワの先祖をこの世界へともたらした存在」「かの次元にて夜と闇を統べる高位の精霊」とは、つまり《夜陰明神》のことです。

復活して早々、彼女への復讐に走るほど、敗北がこたえたのでしょう。「三本の指にも満たない」うちの1つの敗北なのですから。

2019/04/15 00:00 コラム あなたの隣のプレインズウォーカー 第77回 かつて、我らは神であった
https://article.hareruyamtg.com/article/25024/
2. 『時のらせん』で何があったのか

小説「Time Spiral」チャプター20より訳

「このマダラに禍をもたらした地へ向かい、我が帝国を穢したあの精霊を見つけ出す。帝国が真に我がものとなる以前のことであったとしても関係は無い」その両目が怒りに閃きを放った。「復讐を。あのような苦しみをもたらした闇の女を滅し、次に多元宇宙の果てまでも赴いて梅澤の血筋を根こそぎ灰と帰してみせよう。生者の世界を既に去った者も例外ではない」


あまり表に出すことはありませんが、梅澤に対するボーラスの憎しみは凄まじく深いことがわかります。


追われた《夜陰明神》ですが、ドミナリアへと逃げ込んでいます。プレインズウォーカーではありませんが、次元を渡れる珍しい存在です(※1)。

この記事では、その後《夜陰明神》がどうなったかは分かりませんが、MTGwikiのニコル・ボーラスのページによると、追い詰められ、仮面を奪われたものの、生きてはいるようです。

ニコル・ボーラス/Nicol Bolas (ストーリー)
http://mtgwiki.com/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B9/Nicol_Bolas_(%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC)
時のらせん
AR46世紀。ボーラスが封じられた空間にジョイラ/Jhoira、ラーダ/Radha、ヴェンセール/Venser、Aprem(アプレム)、Dassene(ダッセン)、コラス/Corus、Skive(スカイヴ)ら7人が迷い込む。ボーラスはSensei Ryu(龍師範)と名乗り、言葉巧みにヴェンセールの灯を操って、実体を備えた存在として復活を遂げる。

ボーラスは正体を明かし、新たな灯を宿したラーダとヴェンセールに対し支配下に入れと迫る。この仲間の窮地にテフェリー/Teferiが駆けつけ、ボーラスとの決闘が始まる。老獪なボーラスはテフェリーを倒し、アプレムの命を奪うが、ラーダとヴェンセールの殺されても従わないという強い決意に一端要求を取り下げる。

ボーラスはウメザワの血統とそれをマダラにもたらした夜陰明神/Myojin of Night’s Reachへの呪詛を吐き、鉤爪の門を通り抜け神河/Kamigawaへと出発した。

次元の混乱
フレイバー・テキストに登場するも小説Planar Chaosには登場していない。Card of the Day - 2009/4/7によると、ボーラスの多元宇宙中への多大な影響力を示した上で、ストーリーで言及なくフレイバー・テキストのみの登場であっても、それは驚きではないと補足されている。

小説Time SpiralからFuture Sightに再登場するまでのこの期間に少なくとも、ドミナリア以外の次元(おそらく神河)において夜陰明神を追い詰め、(殺害までには至らなかったが)複製でない「本物の夜陰の仮面」を奪い取っている。また多元宇宙の調査も行っており、同時にアラーラやアモンケットを利用した陰謀に手をつけ始めていたと考えられる。

未来予知
小説Future Sightでは、ニコル・ボーラスは鉤爪の門を通ってマダラに帰還すると、待ち受けていたレシュラック/Leshracから伝統的な作法に則った決闘を挑まれる。

レシュラックは夜陰明神から授かった「夜陰の仮面の複製」を用いることで、ジェスカ/Jeskaに眠っていた「フェイジ/Phageの腐敗の力」を制御下におき、ボーラスの黒マナと精神攻撃能力をも奪い取って己の力とする。肉弾戦と魔法の応酬による一進一退の攻防が続くも、ボーラスはフェイジの腐敗によって肉体が急速に腐り落ちてしまい、連続プレインズウォークで逃走する。しかし、レシュラックは追いすがり、ラヴニカ/Ravnicaから神河、ウルグローサ/Ulgrothaと次元を渡った戦いの後、再び両者はマダラに戻って対峙する。

肉体がほとんど崩れ落ちた相手を前に余裕のレシュラックだったが、その刹那、ボーラスの鋭い尻尾がレシュラックの胸を貫き形勢は逆転する。実は、ボーラスは「夜陰の仮面のオリジナル」を携えていたため、自身の精神攻撃もフェイジの腐敗も効果がなかったのだ。レシュラックが欺きに気付いたときにはもはや手遅れで彼の精神は仮面に封じ込められ、ボーラスはレシュラックの灯を用いてマダラの時の裂け目を修復する。

ボーラスはラーダやヴェンセール、ジェスカらに別れの言葉を残し鉤爪の門から旅立った。


また、彼女の持つ「夜陰の仮面」がボーラスとレシュラックとの対決において重要な役割を果たしていました。これほどの力があるのなら、カード化した時にどのような能力になるのか、気になります。

現在のストーリーでは、ニコル・ボーラスは敗北して《牢獄領域》に永遠に囚われている状態です。ここからの復活があり得るのかも分かりませんが、そうなった場合、今度こそ梅澤一族への復讐を果たすのでしょうか。さすがに今度は、ラヴニカで自身を倒したプレインズウォーカー達への復讐へ行くでしょうか。




※1
神河の明神はプレインズウォーカーと同等の力をもつとされているので、そのためでしょうか。
2012/08/31 20:46 コラム あなたの隣のプレインズウォーカー ~第11回 ギルドの都へおかえりなさい~
https://article.hareruyamtg.com/article/article_217/

また、その他にも《邪神カローナ》や《約束された終末、エムラクール》がプレインズウォーカーでないにも関わらず次元を渡っています。
2017/05/10 00:01 コラム あなたの隣のプレインズウォーカー ~第56回 アモンケットへようこそ~
https://article.hareruyamtg.com/article/article_4159/
2016/07/12 00:02 コラム あなたの隣のプレインズウォーカー ~第46回 あなたの隣のエムラクール~
https://article.hareruyamtg.com/article/article_3041/

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