『統率者(2017年版)』に収録された伝説のクリーチャーについての記事です
2017年8月25日 『統率者(2017年版)』 APR 5, 2017
https://magic.wizards.com/ja/content/commander-2017-commanders
このクリーチャーについてですが、先日同様、詳しい解説記事があるので、そちらを引用することとします。
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第59回 あなたの隣のコマンダー2017 ドラゴンズ~
https://article.hareruyamtg.com/article/article_4504/
大口縄は、記事にもある通り「ラスボス」といえる存在なので、神河のストーリー全体の解説になるのも必然と言えるでしょう。
この解説から分かる通り、大口縄は「今田魅知子」と「大口縄の娘」に倒され、その二人に役割を取って代わられてしまいました。
神河に公式で再訪するとしても、再登場する可能性は低そうです。そうしたキャラクターをカード化するには、『統率者(2017年版)』のような特殊セットは、ちょうどいい場所だったと言えます。
もっとも、大口縄が復活した、という展開があったとしてもおかしくはないのですが。それはそれで新しいストーリーの起点となるでしょう。
2017年8月25日 『統率者(2017年版)』 APR 5, 2017
https://magic.wizards.com/ja/content/commander-2017-commanders
復讐の神、大口縄
大口縄は、星のように瞳を燃え上がらせる強大な竜であり、かつては神河最高の神でした。精霊界と物質界を隔てる帳が弱まったとき、大口縄の神性は君主今田に奪われました。20年に渡る神の乱の始まりです。
このクリーチャーについてですが、先日同様、詳しい解説記事があるので、そちらを引用することとします。
あなたの隣のプレインズウォーカー ~第59回 あなたの隣のコマンダー2017 ドラゴンズ~
https://article.hareruyamtg.com/article/article_4504/
1. 世界法則の顕現
《復讐の神、大口縄》
神河ブロックストーリーのラスボスと言って差し支えない存在です、大口縄。当時カード化はされていませんでしたが、《最後の裁き》にその姿を見せていました。
《最後の裁き》
いわゆるヤマタノオロチ。今回ドラゴンとしてカード化されたことで、「ハイドラじゃなかったのか」という声も聞こえます。大口縄の元々の描写がどうだったのか、神河ブロックの小説を調べてみました。小説「Heretic: Betrayers of Kamigawa」チャプター13より引用
“The Great Spirit Beast,” Konda said. Takeno noticed his eyes begin drifting anew. “O-Kagachi, The Great Old Serpent. The embodiment of the kakuriyo itself has come to claim The Taken One, that which now rightfully belongs to me.”
Serpentだった。事実神河のドラゴンは東洋龍的な、蛇に近い姿をとっているのでまあこの場合いいんじゃないでしょうか……? それにハイドラで神ですと《大祖始》と色々かぶりますしね。
さて、大口縄について説明するにはまず神河という次元の姿から始める必要があります。
神河次元は二つの領域から成っています。人の世界「現し世(うつしよ)」と精霊の世界「隠り世(かくりよ)」。精霊、神河世界では「神/Kami」と呼ばれるそれこそが、神河世界を大きく特徴づける存在です。彼らはそのクリーチャー・タイプが示す通りに「スピリット」、自然の力や何らかの強い感情の具現であったり、付喪神であったり、いわゆる妖怪であったりと様々です。
《空を引き裂くもの、閼螺示》《古の法の神》《雪女》
ですが神の中でも大きな力を持つ「高位」の存在は世界でも普遍的なものや不可欠の要素の具現であり、それこそ他の次元における神/Godのように崇拝されています。代表的なのは五色の「明神」サイクルですね。
《浄火明神》《風見明神》《夜陰明神》《激憤明神》《生網明神》
それぞれが主に司るのは光、風、闇、炎、生命。一方で大口縄は隠り世そのものの体現であり、あらゆる神の頂点に位置する存在です。ですが世界の根本にあまりに近いためか、その存在はほとんど知られていませんでした。神河の神の多くは力を持ち、信仰や畏敬の対象であり、人にとっては遠くて近い存在。ですが神河ブロックの物語では、長く続いたその均衡と境界が破られた「神の乱」が描かれています。その発端は一体?
《永岩城の君主、今田》《奪われし御物》
永遠原(とわばら)を統べる大名、今田。彼は現し世と隠り世の境が弱まった隙に《三日月の神》や空民と共謀して儀式を行い、大口縄の「要素」を奪ってその力を我がものとしました。大口縄は怒り狂い、以来20年続く「神の乱」の始まりとなりました。
ちなみに、「現し世と隠り世の境が弱まった」理由は、あの「時の裂け目」の影響によるものです。裂け目はドミナリア次元にて発生したものですが、ドミナリアは多元宇宙世界の中心に位置することから、その影響は他の次元にまで波及していました。
《永岩城の君主、今田》は破壊不能能力を持ちますが、これは彼が奪った大口縄の要素……《奪われし御物》の力によるものです。破壊不能、当時はまだ「破壊されない」という注意書きのままでしたが、『ダークスティール』にて大々的に登場したものでした(ちなみに「破壊されない」という概念そのものは『アルファ版』から存在します。タイムシフト再録された《土地の聖別》がそれ)。神河の一つ前、『ミラディン』ブロックでの「破壊されない」能力は「破壊されない金属、ダークスティール製であるため」というフレイバーでした。それが今田大名は一見生身の人間であるのに破壊されない、これは発表当時とても衝撃でした。今でこそ破壊不能能力はさほど珍しくなくなりましたけどね(「再生」能力と入れ替わるような役割で与えられていると思われます(※1))。
《不死の援護者、ヤヘンニ》《ボロスの魔除け》《茨異種》
さて「神の乱」の20年目、大口縄がついに今田の居城である永岩城を直接攻撃した時のこと。その混乱に乗じ、夜陰明神の加護によって「影から影へと渡り歩く」梅澤俊郎が、奪われし御物を持ち出しました。大口縄はその存在が消えたことを察し、破壊を残して去りました。
そして御物は樹海で待つ《真実を求める者、今田魅知子》へと届けられ、解放されます。奪われし御物、大口縄の「娘」は人間の娘の姿をとり、ですが皮膚は鱗に覆われ、目もまた蛇のそれでした。大口縄の要素を奪う儀式は20年前、魅知子姫の誕生と同時に執り行われていたため、二人は霊的な「姉妹」として強い繋がりを持つに至っていました。
《真実を求める者、今田魅知子》
探していたものを発見し、大口縄は怒り狂って樹海へ向かいます。そしてこれからどうするべきか、姉妹は話し合いました。「彼女」はかつて大口縄の一部でしたが、今田によって摘出されたことから自我を持つに至り、再び大口縄に取り込まれることを拒みました。また、今田の行為と大口縄による破壊によって、神河世界の理は崩れつつありました。大口縄と今田を倒し、神の乱を終わらせ、新たな理を作り、自分たちがその守り手となる。それが姉妹の結論でした。
二人は大口縄に対峙します。その頭を一本また一本と拘束し、石へと変えて無力化し、そして残り二本になった時に大口縄はついに空から落ち、その姿もありふれた蛇程度の大きさにまで縮んでしまいました。二人は大口縄の残る二つ頭をそれぞれ食らうことで止めを刺し、続いて今田をも容易く倒し、かくして神の乱は終わりを迎えたのでした。
姉妹は大口縄の後を継いで、現し世と隠り世の境を守る存在となりました。それぞれの父親が乱した世界の法則と和を、新たな形で安定させるために。そして話中で恐らく数百年後のこと。小説「Future Sight」にて、ボーラスとレシュラックが戦いの最中に神河と思しき次元をかすめる場面がありましたので紹介します。小説「Future Sight」P.255-256より訳
彼(レシュラック)はボーラスを追ってとある不思議な次元へ、いや、とある不思議な次元のすぐ外側の虚空へ辿り着いた。その世界は珍しい果実が割れたように、二つの涙型が合わさって完全な球形を成していた。球は曇っており、氷水の鉢のように不透明で、その形の先がどのようなものかは全く見通せなかった。
(略)
彼とその世界の間に、獰猛そうな女性が二人、槍と剛弓を手に現れた。ほぼ双子のようで、そのきらびやかな鎧の下の姿はほぼ同一だった。左の一人は蛇を思わせる鋭さと危険を漂わせ、もう一人は女王のような威厳を携えていた。
二人は槍を交差し、声を合わせて告げた。「我等はこの世界の守り手。そなたを歓迎することはできぬ。立ち去るがよい」
一方で梅澤俊郎はというと。過去に数度書いた通り、彼は「神の乱」が終わった後に夜陰明神によってドミナリアに流されました。ここで疑問なのは何故夜陰明神が神河の外の世界を知り、そこへ渡ることができたのかということ。上に書いたように、現し世と隠り世の境が弱まったのは時の裂け目による影響。ですがそれだけでなく、大口縄が神の乱にかまけていたことでその境はさらに弱まり、その隙に夜陰明神は神河の外の世界を覗くことができたのでした。『神河救済』小説から、その件についての夜陰明神と俊郎の会話を訳します。
《梅澤俊郎》《夜陰明神》小説「Guardian: Saviors of Kamigawa」P. 309-310より訳
「あの大蛇が御物を見つけようと躍起になる間、世界の壁はさらに脆くなった。さらにその壁の守りが疎かになると、我は肉体と精霊の境界のみならず神河と他の世界との境界を越えられるとわかった。異なる法則、異なる力への道を持つ全くの新たな世界。大口縄の目が届かぬ間、我はそれらの世界を訪れることができた。そこで何を見たか、わかるかの?」
「宝物ですか? それとも啓発、新たな目的でしょうか?」
「それもあるが、さらに多くのものだ。我は神河と同じように崇拝されていた。そのため他の世界にも我は存在する。崇拝者たちは我を異なる名で呼び、異なる儀式を行う。だがあらゆる世界で我は、その半分を満たす闇と深い関わりを持つとされていた。とても……心躍る知見ではないか」
あらゆる世界に夜と闇があり、それを司る存在が崇拝されている。どのような世界でも、例え姿は違っても、「夜と闇を司る」それらは本質的に夜陰明神と同じ存在……ということなのでしょうかね。ちなみに12年前にこの部分を読んだ時、私に《ショック》が走ったんですよ。いるじゃん、ジャムーラにも、夜の名を持つすごい精霊が。以来ことあるごと(※2)に「そうだったら面白いと思わない?」くらいの気分でそれを書いています。
そして「現代神河」がどうなっているのかはほとんどわかっていません。ジェイス主人公小説「Agents of Artifice」での描写、また第39回(※3)で取り上げた《大蛇の大魔導師、かせ斗》や、Magic Story『カラデシュ』編で語られたタミヨウ一家の様子(※4)からするに当時から大きな変化はなさそう、というくらいですね。いずれ通常セットとして「回帰」することはあるのか、私もわからない。以上、何だか大口縄というよりも神河ブロックストーリー結末の解説でした。
※1
https://mtg-jp.com/reading/mm/0018183/
※2
https://article.hareruyamtg.com/article/article_3529/
※3
https://article.hareruyamtg.com/article/article_2198/
※4
https://mtg-jp.com/reading/ur/0017708/
大口縄は、記事にもある通り「ラスボス」といえる存在なので、神河のストーリー全体の解説になるのも必然と言えるでしょう。
この解説から分かる通り、大口縄は「今田魅知子」と「大口縄の娘」に倒され、その二人に役割を取って代わられてしまいました。
神河に公式で再訪するとしても、再登場する可能性は低そうです。そうしたキャラクターをカード化するには、『統率者(2017年版)』のような特殊セットは、ちょうどいい場所だったと言えます。
もっとも、大口縄が復活した、という展開があったとしてもおかしくはないのですが。それはそれで新しいストーリーの起点となるでしょう。
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