神河教訓 - 反転
2019年12月5日 Magic: The Gathering
神河の失敗の1つに反転カードがあります。
マロー曰く「日本の神話の共通するテーマが変身」、ということで作られたようです。
反転動転驚天動地――神河物語 の反転カードのデザイン
https://web.archive.org/web/20041217003145/http://www.hobbyjapan.co.jp/magic/articles/files/20040922_01.html
しかし、この発想自体、プレイヤーからの賛同はあまり得られなかったようです。
また、カードデザインやゲーム進行の観点からも、イラストも文章も詰め込んだものになったこと、タップした状態だとどちら側なのかわかりづらいこと、などの理由により不評でした。
ホラーがテーマのイニストラードでも、変身を表すために再録を検討されたのですが、上記の難点により採用されませんでした。
そして、生まれたのが両面カードでした。
翻訳記事その他 2011.9.21 狼男、猛る
https://mtg-jp.com/reading/translated/0003997/
翻訳記事その他 2011.10.24 未回答問題:イニストラード
https://mtg-jp.com/reading/translated/0004003/
翻訳記事その他 2011.8.31 両面それぞれの物語
https://mtg-jp.com/reading/translated/0003989/
両面カードは大人気のメカニズムとなり、イニストラードを覆う影で再訪した際も再録され、イクサランやマジック・オリジンや基本セット2019など多くのセットで登場しています。
Making Magic -マジック開発秘話- 2012.9.6 デザイン演説2012
https://mtg-jp.com/reading/mm/0004195/
Making Magic -マジック開発秘話- 2017.3.28 ストーム値:『イニストラード』『イニストラードを覆う影』
https://mtg-jp.com/reading/mm/0018619/
反転も両面も「変身」を表したものなのですが、その人気は対極的と言えます。
また、カード2枚分のテキストを入れる、という点では、分割カードがあります。そちらは何度も再録されるほどの人気で、融合や余波などの専用メカニズムも獲得したほどです。
ただ、余波はレイアウトだけは嫌われているようです。
Making Magic -マジック開発秘話- 2019.3.26 ストーム値:『カラデシュ』と『アモンケット』
https://mtg-jp.com/reading/mm/0032250/
そう考えると、反転もカードのレイアウトを工夫すれば、もっといい評価だったかもしれません。
新しいレイアウトの反転カードを見てみたいとは思いますが、両面カードが人気である以上、そこまでして反転カードをリメイクする可能性は低そうです。
余談
反転カードに比べていいことづくめのように見える両面カードですが、構築済みデッキに中々入れてもらえない、という欠点があります。おそらくは印刷の都合かと思います。
補足
マロー曰く、「神河のデザインをやり直せるなら、反転じゃなくて変身を使う」とのことです。
http://markrosewater.tumblr.com/post/51088614030/if-you-could-re-design-the-kamigawa-block-would-you
マロー曰く「日本の神話の共通するテーマが変身」、ということで作られたようです。
反転動転驚天動地――神河物語 の反転カードのデザイン
https://web.archive.org/web/20041217003145/http://www.hobbyjapan.co.jp/magic/articles/files/20040922_01.html
興味のある人たちのために言っておくと、チームはこの辺に大きな影響を受けたとのことだ。
・宮崎駿の映画、特に「千と千尋の神隠し」と「もののけ姫」
・ビデオゲーム「鬼武者」シリーズ
・アニメ「獣兵衛忍風帖」
・アニメ「犬夜叉」
そして、すぐに明らかになったのが、日本の神話の共通するテーマが“変身”だということだった。この環境のイメージを反映するため、ブロックにはいくつかの変身っぽい要素を含んだメカニズムが必要になった。
しかし、この発想自体、プレイヤーからの賛同はあまり得られなかったようです。
また、カードデザインやゲーム進行の観点からも、イラストも文章も詰め込んだものになったこと、タップした状態だとどちら側なのかわかりづらいこと、などの理由により不評でした。
ホラーがテーマのイニストラードでも、変身を表すために再録を検討されたのですが、上記の難点により採用されませんでした。
そして、生まれたのが両面カードでした。
翻訳記事その他 2011.9.21 狼男、猛る
https://mtg-jp.com/reading/translated/0003997/
プレイヤーから、なぜ両面カードを神河のような反転カードにしないのかという質問を受けましたが、もちろん私たちは狂気のデザイナーたちを何とか引き留めようと努力したのです。神河ブロックの要素の中で時を経て進化していったものがありますが、反転カードはその中には入っていませんでした。反転カードには現時点で以下のような問題があります。
・イラスト枠が狭く、その中にある存在の2つの状態を描く必要がある。その結果、どれだけ完璧に仕上げても落ち着きの悪いものになる。
・各側の文章欄が非常に狭くなる。
・タップ状態の時に、どちらの側なのかがわかりにくい。
・変身前と変身後を同じ絵の中に入れるのは難しい。
翻訳記事その他 2011.10.24 未回答問題:イニストラード
https://mtg-jp.com/reading/translated/0004003/
Q.両面カードはなぜ反転カードではなかったんですか?
A.最初の大騒動が一段落ついて、私は両面カードに関する多くの反響を受け取った。プレイヤーの大多数は、両面カードを楽しんでいるようだ。両面カードを反転カードでは作れなかったのかという質問は沢山寄せられている。反転カードを使えば、両面カードで生じた外部的な問題を起こさずに済んだだろう。
この問題に対しては、すでに一度答えているが、なおもこの質問は絶えない。今回は、これについてもう少し完全な回答を提示することにしよう。なぜ反転カードではないのか、その理由には次のようなものがある。
1)開発部は反転カードを失敗作だと思っている
ゴッドブック研究や市場調査といったものについて語ってきた。それはつまり、セットを後になってから見直し、プレイヤーからの反響を聞くということである。何かが成功したかどうかを知りたいのは、成功していたならそれをもう一度戻すことができるし、失敗していたなら二度と使わないか、あるいはその問題点を克服する方法を見つけることができるからだ。
反転カードは市場調査の結果、非常に評価が低かった。プレイヤーは反転カードを嫌いなのだ(理由? これから推測するとも)。失敗したと分かっているものをなぜ繰り返す必要があるのか? 現在、両面カードが失敗したと仮定してみよう(実際にはそうでないと調査結果は物語っているが)。それでさえも、すでに失敗したことをそのまま繰り返すより、まだ成功するかどうか分からない新しいものに取り組む方がいいに決まっている。
2)反転カードは美しくない
なぜ反転カードの評価が低いのか? 私は、メカニズムによるものではないと考えている。なぜなら、「カードが他のカードに変化する」というメカニズムは他にもあり、それらは反転カードのように評価が低くはないからである。反転カードが不評な理由は、単にそれの見た目が悪いからだと確信している。
(添付画像1枚目を参照)
デザインにおける美学については常々語ってきた。この問題は、ゲーム上の美学と言うよりも見た目上の美しさに起因しているが、どちらもそう遠い話ではない。詰め込みすぎなのだ。たとえば、両面カードを反転カードで作ってみよう。すぐに分かるとおり、場所が足りなくなるので、コモンの「バニラ」狼男である《苛まれし最下層民》/《猛り狂う狼男》を作ってみることにする。
(添付画像2枚目を参照)
反転カードの形だと、こうだ。
(添付画像3枚目を参照)
枠に入るように、いくつかの要素が削られている。イラストは切り取られ、両面カードでは見て取れる物語が消えた。場所がないのでフレイバーを重視することができないのだ。スペース的に可能なのは、人間形態と狼男形態を描くことだけで、それ以上のことは全て取り払われた。文章欄の問題で、フレイバー・テキストもなくなった。そして、もう一つ、パワー/タフネスの欄を作るために、クリーチャー・タイプにあった戦士も取り除かれた(訳注:英語では。日本語ではたまたま文字数が少ないため、クリーチャー・タイプは入ったままになっています)。
この問題は機能の問題ではなく、形の問題である。反転カード版は重要なフレイバーを失っただけでなく、カードに全てを詰め込まなければならないので狭苦しくなるのだ。
3)必要なスペースが足りない
先ほど例示したのは「バニラ」の狼男だ。ほとんどの狼男は「バニラ」ではなく、より多くのルール文章が書かれている。他の両面カードにしてもそうだ。まして《情け知らずのガラク》/《ヴェールの呪いのガラク》に至ってはなおのことである。反転カードを使わなかった理由の一つには、カードに文章が入りきらないということがある。
文字を小さくすればいい? 確かにそれで入るものもあるが、そうなると読むのも難しくなり、またなおさら狭苦しい感じになってしまう。ものによっては、それこそ《情け知らずのガラク》/《ヴェールの呪いのガラク》などはどうやっても入らない。
これが、反転カードを使わずに両面カードを使った理由の説明になっていれば幸いだ。
翻訳記事その他 2011.8.31 両面それぞれの物語
https://mtg-jp.com/reading/translated/0003989/
反転カードのルールを、戻ることもありうると変更する必要が出てくるが、さして問題ではないと。問題は2つあった。
まず、反転カードは狙っていたようには受け入れられなかったと言うこと。最大の問題は、このカードはほとんど2つ分の特性を持つのであまりにごちゃごちゃ詰め込んだ形になってしまうのだ。両面カードならこの問題は解決できる。人間の時は、このカードは完全に人間である。狼男の時は、このカードは完全に狼男である。また、両面カードなら、タップ状態の時にどっちなのか混乱することもなくなる。
2つめの問題は、文章の長さである。反転カードは文章欄が狭く、狼男メカニズムの複雑な文章を書くのには場所が足りないと思われた。両面カードの話が長すぎるので狼男メカニズムについては置いておくが、これからのプレビューの間に必ずお話しすることを約束しよう。
結局のところ、昼夜カードよりも両面カードの方がうまく行くということが明らかになったので、両面カードで話を進めることにした。この先に待ち構えている困難のことはまだ誰も知らなかったのだ。
両面カードは大人気のメカニズムとなり、イニストラードを覆う影で再訪した際も再録され、イクサランやマジック・オリジンや基本セット2019など多くのセットで登場しています。
Making Magic -マジック開発秘話- 2012.9.6 デザイン演説2012
https://mtg-jp.com/reading/mm/0004195/
両面カード
あらゆることを踏まえて、両面カードには多くのデザイン空間がある。つまり、今回の成功によってマジックの未来に資産を残すことが出来たのだ(いますぐ使えるものではないが)。全体として、私は両面カードがこの年の大成功の1つだと感じている。
Making Magic -マジック開発秘話- 2017.3.28 ストーム値:『イニストラード』『イニストラードを覆う影』
https://mtg-jp.com/reading/mm/0018619/
変身 (『イニストラード』『闇の隆盛』『イニストラードを覆う影』『異界月』、『マジック・オリジン』)
人気: 大好評
市場調査の際に我々が尋ねているのは、変身メカニズム単体ではなく両面カードについてである(変身は両面カードの一部である)。これまで全ての両面カードは変身メカニズムを使っているので、両面カードの評価と変身メカニズムの評価は同一視しても問題ないだろう。プレイヤーは変身(と両面カード)を大好きなのだ。これよりも人気があったのは、フルアートの土地とギルド、混成マナ、多色カードだけである。つまり、これは「マジック史上最も愛されたメカニズム」のリストの最高位に位置付けられるものである。
(中略)
ストーム値: 3
まず、このストーム値は両面カードではなく変身の値であると言っておこう(両面カードなら2だ)。変身は、間違いなく再び登場するであろう両面カードの一部であるが、(両面カードという)カードの道具ではなくメカニズムの分類ということになると、落葉樹メカニズムというよりは人気があって何度も再録されるであろうメカニズムだと私は考えている。変身は非常に人気が高く、メカニズムとして考えられる限りのデザイン空間を持っている。ただし同時に平均的なメカニズムよりも問題は多く、その問題のせいで使い続けるということはできないでいるのだ。変身のファン諸君、恐れるなかれ。このメカニズムは必ずや何度も再録されることになるだろう。
反転も両面も「変身」を表したものなのですが、その人気は対極的と言えます。
また、カード2枚分のテキストを入れる、という点では、分割カードがあります。そちらは何度も再録されるほどの人気で、融合や余波などの専用メカニズムも獲得したほどです。
ただ、余波はレイアウトだけは嫌われているようです。
Making Magic -マジック開発秘話- 2019.3.26 ストーム値:『カラデシュ』と『アモンケット』
https://mtg-jp.com/reading/mm/0032250/
余波(『アモンケット』『破滅の刻』)
人気:普通
プレイヤーは全体として余波のゲームプレイは気に入っているが、ほとんどはこれらのカードのレイアウトを嫌っている。再録するとしたら、新しいカード枠を考えることになるだろう。
そう考えると、反転もカードのレイアウトを工夫すれば、もっといい評価だったかもしれません。
新しいレイアウトの反転カードを見てみたいとは思いますが、両面カードが人気である以上、そこまでして反転カードをリメイクする可能性は低そうです。
余談
反転カードに比べていいことづくめのように見える両面カードですが、構築済みデッキに中々入れてもらえない、という欠点があります。おそらくは印刷の都合かと思います。
補足
マロー曰く、「神河のデザインをやり直せるなら、反転じゃなくて変身を使う」とのことです。
http://markrosewater.tumblr.com/post/51088614030/if-you-could-re-design-the-kamigawa-block-would-you
コメント