神河現代 - 新旧メカニズム
2022年2月1日 Magic: The Gathering コメント (2)
マローの開発秘話コラムが更新されました。
神河を再訪するにあたり、旧メカニズムのどれを再録し、新メカニズムをどのようにして作ったのか、という話です。
旧メカニズム再録の是非を端的にまとめるなら、以下の通りです。
武士道:大量には使わないのでNG
反転:変身する両面カードで事足りるのでNG
転生:スピリット部族のメカニズムは不要なのでNG
精霊術:秘儀を使わないのでNG
連繋:スペルに拡張してテストしてもダメだったのでNG
秘儀:メカニズム的に使わないならサブタイプはつけないのでNG
忍術:人気があり再録実績もあるのでOK
献身:部族限定かつデザインが難しいのでNG
魂力:問題ないのでOK
歴伝:デメリットが不評なのでNG
掃引:最悪のメカニズム10なのでNG
知識:フレイバーもメカニズムも神河に相応しくないのでNG
失敗セットと言われるだけあって、メカニズムの評価もなかなかに厳しいものです。
興味深いのは魂力への評価で、「キッカーと同じで広すぎる」のが問題視されています。
実際、手札で捨てて起動する能力は全て魂力に置き換えることができるので、サイクリングや湧血などは魂力と同等と言えるでしょう。
湧血はともかく、サイクリングはキーワード能力なので、他のカードで参照できる点が違いです。
また、魂力もモード付き両面カードでまとめられるのではないか、という考え方もあります。
つまりは1枚で2通りの使い方ができるカード、ということです。
呪文と起動型能力で打ち消し耐性が違うなどの実用性以外だと、魂力では複数の効果を持たせることができるデザイン性が異なるでしょうか。
今のところ、そういったカードは公式には無いようですが、オリジナルカードで作ってみても面白そうだと思いました(※1)。
また、魂力の利点として、カードタイプを選ばないというものがあります。
特に、忍術はクリーチャーが持つものですから、他になるべく幅広いカードタイプで持てるメカニズムが欲しかったことでしょう。
一方で、新メカニズムの開発経緯です。
ここでも、カードタイプの比率が問題になりました。
現代性のアーティファクトテーマとして装備品を大量に入れるには枠が足りなくなるので、クリーチャーと兼用できないか?という発想から、換装が生まれました。
また、伝統性のエンチャントテーマで英雄譚を入れる際にも同様の問題が起き、クリーチャーとの兼用が考えられました。
最初は英雄譚自身がクリーチャー化、次にクリーチャートークンと変化し、最終的にクリーチャーに変身する形に落ち着いたそうです。
どのカードタイプでも持たせられる魂力とは対照的に、カードタイプのバランス調整のために生まれたメカニズムというのが面白いでしょう。
しかし、機械と生命を融合する未来派技術の換装、歴史を重んじる伝統派の両面英雄譚、というのは、フレイバー的にも違和感がありません。
単なる調整というだけで収まらなかったのは実に見事です。
そして、2つのテーマと中心メカニズムができたところで、その両方に関わるメカニズムとして改善と、調和(両方をコントロールすると恩恵がある名前なしメカニズム)が作られました。
この手の対立する陣営にメカニズムを与えるのはよくあることですが、その両方を繋げるメカニズムというのは希少なので、興味深い例です。
『ゼンディカーの夜明け』におけるパーティーメカニズムも、その一例と言えるでしょう。
最後に、他のセットとのシナジーを考えて、部族カードは神河固有のものと、一般的なものとをまとめて扱うようにデザインされました。
これも、旧神河が孤立的過ぎたことを踏まえてのことでしょう。
一方で、スピリットは特にそういった工夫がありません。
そもそも必要ないでしょう。
旧神河の頃ではスピリット部族はマイナーでしたが、今では大分メジャーになりました。
イニストラードでは主要部族ですし、死者の魂という明快なフレイバーから、他の次元でもカードやトークンとして何度も登場しています。
こうした変化もまた面白いところです。
※1
後に、公式のカードとして魂力を2つ持つ《巨大な空亀》が公開されました。
神河を再訪するにあたり、旧メカニズムのどれを再録し、新メカニズムをどのようにして作ったのか、という話です。
両面をプレイする
先週、現代性と伝統性の対立をデザインの基にしたと説明した。そして、その現代性の側はアーティファクトに、伝統性の側はエンチャントに焦点を当てていると。つまり、それぞれの面にアーティファクト・クリーチャーとクリーチャー・エンチャントがいて、そのカード・タイプの大量のカードを使い、そのカード・タイプをメカニズム的に参照するカードもあるだろうということである。この2つの面に焦点を当てるため、私はそれぞれに固有のメカニズムを持たせようと考えた。現代性の側はアーティファクトが、伝統性の側はエンチャントが持つのだ。
しかし、興味深いことに、現代性のメカニズムは、我々がある異なる問題を解決すべく取り組んでいたことから生まれた。この世界にはどうしても大量の機体や装備品が必要だが、そのための枠が足りなくなったのだ。装備品をクリーチャーの枠に入れる方法はないだろうか。そうだ、クリーチャーでもあるとしたらどうだろうか。
引用元
Making Magic -マジック開発秘話- 2022.2.1 『世界』の創造 その2
https://mtg-jp.com/reading/mm/0035762/
旧メカニズム再録の是非を端的にまとめるなら、以下の通りです。
武士道:大量には使わないのでNG
反転:変身する両面カードで事足りるのでNG
転生:スピリット部族のメカニズムは不要なのでNG
精霊術:秘儀を使わないのでNG
連繋:スペルに拡張してテストしてもダメだったのでNG
秘儀:メカニズム的に使わないならサブタイプはつけないのでNG
忍術:人気があり再録実績もあるのでOK
献身:部族限定かつデザインが難しいのでNG
魂力:問題ないのでOK
歴伝:デメリットが不評なのでNG
掃引:最悪のメカニズム10なのでNG
知識:フレイバーもメカニズムも神河に相応しくないのでNG
失敗セットと言われるだけあって、メカニズムの評価もなかなかに厳しいものです。
興味深いのは魂力への評価で、「キッカーと同じで広すぎる」のが問題視されています。
実際、手札で捨てて起動する能力は全て魂力に置き換えることができるので、サイクリングや湧血などは魂力と同等と言えるでしょう。
湧血はともかく、サイクリングはキーワード能力なので、他のカードで参照できる点が違いです。
また、魂力もモード付き両面カードでまとめられるのではないか、という考え方もあります。
つまりは1枚で2通りの使い方ができるカード、ということです。
呪文と起動型能力で打ち消し耐性が違うなどの実用性以外だと、魂力では複数の効果を持たせることができるデザイン性が異なるでしょうか。
今のところ、そういったカードは公式には無いようですが、オリジナルカードで作ってみても面白そうだと思いました(※1)。
また、魂力の利点として、カードタイプを選ばないというものがあります。
特に、忍術はクリーチャーが持つものですから、他になるべく幅広いカードタイプで持てるメカニズムが欲しかったことでしょう。
一方で、新メカニズムの開発経緯です。
ここでも、カードタイプの比率が問題になりました。
現代性のアーティファクトテーマとして装備品を大量に入れるには枠が足りなくなるので、クリーチャーと兼用できないか?という発想から、換装が生まれました。
また、伝統性のエンチャントテーマで英雄譚を入れる際にも同様の問題が起き、クリーチャーとの兼用が考えられました。
最初は英雄譚自身がクリーチャー化、次にクリーチャートークンと変化し、最終的にクリーチャーに変身する形に落ち着いたそうです。
どのカードタイプでも持たせられる魂力とは対照的に、カードタイプのバランス調整のために生まれたメカニズムというのが面白いでしょう。
しかし、機械と生命を融合する未来派技術の換装、歴史を重んじる伝統派の両面英雄譚、というのは、フレイバー的にも違和感がありません。
単なる調整というだけで収まらなかったのは実に見事です。
そして、2つのテーマと中心メカニズムができたところで、その両方に関わるメカニズムとして改善と、調和(両方をコントロールすると恩恵がある名前なしメカニズム)が作られました。
この手の対立する陣営にメカニズムを与えるのはよくあることですが、その両方を繋げるメカニズムというのは希少なので、興味深い例です。
『ゼンディカーの夜明け』におけるパーティーメカニズムも、その一例と言えるでしょう。
最後に、他のセットとのシナジーを考えて、部族カードは神河固有のものと、一般的なものとをまとめて扱うようにデザインされました。
これも、旧神河が孤立的過ぎたことを踏まえてのことでしょう。
一方で、スピリットは特にそういった工夫がありません。
そもそも必要ないでしょう。
旧神河の頃ではスピリット部族はマイナーでしたが、今では大分メジャーになりました。
イニストラードでは主要部族ですし、死者の魂という明快なフレイバーから、他の次元でもカードやトークンとして何度も登場しています。
こうした変化もまた面白いところです。
※1
後に、公式のカードとして魂力を2つ持つ《巨大な空亀》が公開されました。
コメント
個人的に気になります!
いつか、調整版が日の目を見ると良い、と思います!