神河現代 - 再訪に至る道のり
2022年1月28日 Magic: The Gathering コメント (2)
マローの開発秘話コラムが更新されました。
なぜ神河を再訪することになったのか、どうやって再訪するのか、という話です。
旧神河の失敗要素は、当ブログでは再三書いてきましたし、このコラムでもおさらいが書いてありますので、それ以上のことは触れません。
にも関わらず再訪することになった理由は何なのでしょうか。
統率者戦の人気拡大による伝説クリーチャーへ注目が集まったこと、ブログで「再訪はあり得ない」と何度も話題にしたために逆に再訪してほしいという熱が高まったことがまず下地としてありました。
さらに、開発部にも、ポップカルチャー日本風の次元を作りたい、というモチベーションがあったようです。
とはいえ、これだけなら新しい次元で事足りますし、実際に神河を意識せずに次元を作ったところ、明らかな別物になりました。
神河特有の種族を入れることはできますが、それでも神河らしさは十分ではありません。
最後の一押しとなったのが「対立構造」でした。
ギルド・断片・氏族のような組織・陣営の対立を、現代性と伝統性との2つに割り当てるということです。
伝統陣営を作るのであれば、昔訪れたことのある次元のほうが、より芳醇なものに仕上がります。
新しい次元を作るのではなく、神河を再訪する意義がここにあると言えるでしょう。
後は、現代と伝統の対立構造を、メカニズム的にどう落とし込むかです。
現代的面をアーティファクトで、伝統的面をエンチャントで、表現することに決まりました。
前者はよくある手法ですが、後者は祭殿などの人気エンチャントがあった神河ならではと言えます。
コラムでは触れていませんが、アーティファクトと英雄譚というエンチャントの両方を、「歴史的」という過去を表現するメカニズムとして扱った『ドミナリア』とは対照的なのが面白いところです。
この対立は、アーティファクト・未来志向のNo.1,2である青と赤、エンチャント・伝統志向のNo.1,2である緑と白とでキレイに分けることができるのも利点です。
なぜ不人気で有名な神河に再訪したのか、発表当時から気になっていました。
こうして経緯を見てみると、ただ失敗が悔しいからリベンジしたい、というだけではなかった、と分かります。
特に、フレイバー的にもメカニズム的にも「神河だからこそ」という意義があるのは嬉しい限りです。
なぜ神河を再訪することになったのか、どうやって再訪するのか、という話です。
帰還限界点
新しい世界に基づくトップダウン・デザインをしたのは初めてだったので、我々は多くの失敗をした。我々はメカニズムの前にクリエイティブを確定させたが、それによって多くのぎこちないデザインや孤立的メカニズム(同セット内の他のカードと組み合わせてしか働かないもの)を生むことになった。我々は大テーマとして伝説関連を選んだが、これはセットにうまく編み込まれておらず、大量のブースターを開封しても気づかないことがあり得た。クリエイティブそのものは、ユーザーの多くに馴染みがない日本神話の一面に忠実すぎた結果、セットの大部分が多くのユーザーにとって日本よりも奇妙に感じられるものになっていた。全体として、神河はクールな次元だったが、その実装は可能な限り良いものにできていたとは言えなかった。(再び強調しておきたいのは、我々がこの種のトップダウンのブロックをデザインしたのはこれが初めてだったということである。)
結果として、このセットはうまくは行かなかった。売上は落ちた。プレイ数は減った。メカニズム的にもフレイバー的にも、市場調査の結果はセットへの市場調査を始めて以来最低だった。社内で、これは大失敗だと判断された。そしてこれで話はおしまい、だったが、ここで統率者戦が勃興した。このフォーマットは伝説のクリーチャーにスポットを当て、突然、『神河物語』ブロックの伝説のクリーチャーが注目を集めることになったのだ。当時、セットごとの伝説のクリーチャーの枚数はずっと少なかったことを思い出してもらいたい。また、神河には、時を経てついにそのユーザーを見つけた愛すべき要素があった。
読んだことのない諸君のために説明しておくと、私のブログはTumblrでやっていて、Blogatogという。毎日、私はマジックのプレイヤーからの質問に答えているが、その日の話題によって盛り上がったり盛り上がらなかったりしている。何度も何度も取り上げているテーマは、このブログのレギュラーという内向けジョークとも言えるほどになっている。一番繰り返しているテーマが、神河への再訪だった。初代『神河物語』がほぼあらゆる面で失敗していたので上司への売り込みは難しいと説明していたが、からくりがそうだったように、私が無理だといえば言うほどユーザーは求めるものなのだ。多くのプレイヤーに何年もこの話をしていて、私も内心ではこれはしなければならないものなのだということがわかっていた。しかし、そのための方法は見えなかった。今日の話は、「絶対にありえない」から「やろう」に到った経緯についてのものである。
引用元
Making Magic -マジック開発秘話- 2022.1.28 『世界』の創造 その1
https://mtg-jp.com/reading/mm/0035751/
旧神河の失敗要素は、当ブログでは再三書いてきましたし、このコラムでもおさらいが書いてありますので、それ以上のことは触れません。
にも関わらず再訪することになった理由は何なのでしょうか。
統率者戦の人気拡大による伝説クリーチャーへ注目が集まったこと、ブログで「再訪はあり得ない」と何度も話題にしたために逆に再訪してほしいという熱が高まったことがまず下地としてありました。
さらに、開発部にも、ポップカルチャー日本風の次元を作りたい、というモチベーションがあったようです。
とはいえ、これだけなら新しい次元で事足りますし、実際に神河を意識せずに次元を作ったところ、明らかな別物になりました。
神河特有の種族を入れることはできますが、それでも神河らしさは十分ではありません。
最後の一押しとなったのが「対立構造」でした。
ギルド・断片・氏族のような組織・陣営の対立を、現代性と伝統性との2つに割り当てるということです。
伝統陣営を作るのであれば、昔訪れたことのある次元のほうが、より芳醇なものに仕上がります。
新しい次元を作るのではなく、神河を再訪する意義がここにあると言えるでしょう。
後は、現代と伝統の対立構造を、メカニズム的にどう落とし込むかです。
現代的面をアーティファクトで、伝統的面をエンチャントで、表現することに決まりました。
前者はよくある手法ですが、後者は祭殿などの人気エンチャントがあった神河ならではと言えます。
コラムでは触れていませんが、アーティファクトと英雄譚というエンチャントの両方を、「歴史的」という過去を表現するメカニズムとして扱った『ドミナリア』とは対照的なのが面白いところです。
この対立は、アーティファクト・未来志向のNo.1,2である青と赤、エンチャント・伝統志向のNo.1,2である緑と白とでキレイに分けることができるのも利点です。
なぜ不人気で有名な神河に再訪したのか、発表当時から気になっていました。
こうして経緯を見てみると、ただ失敗が悔しいからリベンジしたい、というだけではなかった、と分かります。
特に、フレイバー的にもメカニズム的にも「神河だからこそ」という意義があるのは嬉しい限りです。
コメント
統率者戦の人気が、ネオ神河の後押しになったと聞いて、嬉しいです!